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……タイッ!?
【学園物 官能小説】

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……タイッ!? 第二話「励ましてあげタイッ!?」-14

「自分の独占物が他人の手に渡って平気でいられると思う? 里美ちゃん、皆に嫉妬してるのよ。君が自分の手元から離れるのを嫌がって……」
 くすくすと笑いながら「かわいいよね」と言う紅葉に反感を覚える紀夫だが、その
おかしな説得力に篭絡されそうになる自分がいた。
「俺にどうしろっていうんですか?」
「うんとね……、そうね、そこまで考えて無かったわ。でもまあ、君の好きなようにすればいいんじゃない?」
「それなら別に普段どおりに接しますよ。俺はあくまでも陸上部のマネージャーですし」
 努めて冷静を振舞うも内心は空以上に荒れ模様を呈している。いくら紅葉の妄想の域を出ないとはいえ「もしそれが本当なら?」という期待があり、里美との関係を意識する気持ちが芽生える。
 そもそも自分は純粋な善意で里美を助けたいのだろうか? 彼女が陸上で記録を出したところで見返りなど無く、それこそ陰日なたの花のごとく。
 困っている、悲観にくれた彼女が立ち直れたことへ関与できたといえば自尊心を補うこともできるが、ただの自己満足の域を出ない。現実はそれを評価せず、彼に残るものといえば疲労感と内申書の部活欄へのコメントぐらい。
 そしてもう一つ重要な問題がある。
 自分自身、里美をどう思っているのか?
 練習中、部員達とけらけら笑いあうたびに短く揃えられた前髪が揺れる。勝気な様子で教員に対しても物怖じすることなく意見を言える人。けれど、その裏では折れやすい繊細な神経を持つ彼女。自らを添え木としてでも力になってあげたいと思わせる。
 それは恋心なのだろうか?
 ――そんなこと……でも、いや、違うでしょ……。
 しかし午前中の言い争いがひっかかり、素直に評価できずにいるのも事実。そもそもあの場所にいたのが自分なのであって、他の誰かでも良かったのではないだろうかと思うこともある。
 グラウンドではもうすぐ試合が始まるのだろう。色とりどりのユニフォームに身を包んだ選手がモザイクガラス越しにも目立ち始める。
 そんな折、下半身から違和感を訴えられる。
「ん? な、なにしてるんですか?」
 見ると紅葉がジャージのズボンの帯紐を解いていた。
「んふふ……何って、授業料?」
「授業料って、聞いてませんよ?」
「そりゃ言ってたら来ないでしょ? 君ってムッツリ君だもん」
 裾口に手をかけられると爪が腹に触れ、背筋がゾクリとする。
「こんなところでそんなこと、第一、僕は香山さんの……」
「僕? うふふ。テンパると地が出ちゃうのね……」
 慌てて口をつぐむも時既に遅く、その一瞬の隙にズボンが下ろされてしまう。
「わぁ、辞めてくださいよ……」
 下ろされたズボンを慌てて上げ、あとずさる。けれど壁に阻まれ退路も無い。
「嘘嘘、君全然抵抗してないよ? しょうがないなあ……。んじゃさ今辞めたら大声出すよ? そしたら困るでしょ?」
 笑いながら出口に向う紅葉はそのまま鍵を閉める。
「脅迫なんてずるいです……」
 密室というには抜け道の多い倉庫だが、ガラクタ置き場に来る人など居らず、幸か不幸か邪魔をするものがない。
「だって君、そういわないと踏ん切りつかないじゃん」
 紅葉のおためごかしに乗りたくなるのは、彼が欲求不満な日々を過ごしているから。
「いいじゃない、少しぐらいさ……」
 近づく紅葉と後ずさる紀夫。壁に追いやられた彼は窓の鍵を外し、あけようとする。高さは彼の胸元より高い程度。ギリギリ出られる高さだ。けれど立て付けが悪いらしく、頭半分も開かない。
「はぁ……ショックだな。そんなに私って魅力無い? 逃げ出すほど嫌?」
「あ。いや、そういうわけじゃなくて、香山さんの応援に……」
「時間ならまだあるってば。それなのにさ、君ってば酷い」
 わざとらしく目を潤ませる紅葉はそのまま床にヘタレコミ、顔を覆いながらおいおいと泣きまねをする。


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