特別な色の華-3
「はぁ?」
川崎は馬鹿にしたように華子を見たが、華子は微動だにしない
「明日からは松下にこういうことするの、やめてよ」
川崎ら同じグループの女子生徒も松下もクラスメートもみんな驚いた顔で華子を見る。
その中で、俊樹だけが口の端を少し上げて、満足気な顔を隠せなかった。
川崎が言い返そうとしたとき、授業の始まりを告げるベルが鳴った。
舌打ちをして席に着き始める彼女らを見ながら、松下が華子に声をかけた。
「あの、ありがとう、私なんかの為にごめんね。」
か細く消え入りそうな松下の言葉に華子が振り返り、きっぱりと言った。
「あんたの為にしたんじゃないわ。」
先程とは少し違った緊迫感が漂う。
俊樹は不思議と興奮を覚え、妙な嬉しさを感じた。
宮内華子はどうしてこうなんだろう。
味方をつくらない。
孤独な戦いをしている。
きっと彼女は目の前の人間と戦っているわけじゃないんだろうな…。
俊樹は華子を哀れむように見つめた。
---次の日から自然と華子に標的がすり替わり、攻撃している女子生徒の中には、なぜか松下も含まれていた。
しかし、華子は何をされても怒ったり泣いたりせず、また、学校を休むこともなかった。
むしろ、俊樹の目には、その状況を楽しんでいるようにさえ見えた。
流れが変わったのは、ついこの間のことだ。
華子がトイレに入っていくのを見た川崎達は、すかさず上からバケツいっぱいの水を掛けた。
ずぶ濡れの華子が廊下を歩いて行くのを見て、俊樹はなんてベタでつまらないアイデアだ、と心の中で呟いた。
教室に入ってくるかと思ったが、華子はそこを通り過ぎて脇目も振らずに職員室に向かった。
「制服の値段を教えて下さい。」
華子の状態に驚き、色々と問い掛けてくる教師に、彼女はそれしか聞かなかった。
華子の足は、そのまま教室に向かう。
ぽたぽたと水滴を落としながら、まっすぐ川崎の席まで行き、彼女の胸倉を掴んで制服代を請求した。
「私をストレス解消に使うならその分の金は払ってよ。」
川崎がその腕を引き剥がそうとするも、意外に強い力で掴んでいる為一向に離れない。