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特別な色の華
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特別な色の華-4

「服延びるんだけど」

川崎が引き攣った顔で華子を見る。

「じゃあ私のと交換する?」

その言葉を聞いて他の女子生徒が物を投げ付ける。

華子は彼女を睨んだ。

「どうせ殴るなら自分の手で殴れば。」

まるで古いタイプの女番長の台詞だな。

俊樹は笑い出しそうになるのをこらえる。

華子がそのとき周りを見回した。
クラスメート全員がその視線を避け、唯一彼女を観察していた俊樹と目が合った。

俊樹は逸らさずにただ、華子を見続ける。

ほんの数秒目線が交わり、川崎が華子に蹴りを入れたことでそれが途切れた。

川崎らグループの女子生徒が余裕の表情を崩すまいとしているのに対し、華子は人数も周囲も気にせず本気で掴み掛かっていた。

その気迫に気圧されてか誰も声を発することが出来なかったが、始業ベルの音で我に返ったクラスメート数人が止めに入り、その場は終結した。

結局のところ、華子が制服代を獲得したのかどうか、俊樹は知らない。

しかし、いつの間にか華子の制服は真新しいものに変わっていた。

華子に対する攻撃も段々と下火になっていった。

川崎達が『あいつつまんない』『もう飽きた』と言っているのを俊樹は聞いたが、彼女らに掴み掛かっていった華子を思い出し、笑いが洩れた。

ごまかしながら生きている灰色の人間は、鮮やかな華子が恐いのだ。

俊樹はなぜだか嬉しくなり、そして、考える。

俺は、どうなんだ。

『誰よりも濁った灰色の俺は、華子が怖いか?』


***


鏡の中にいる男が覇気の無い顔でこちらを見る。

---いつも真剣な華子は、感受性が乏しい自分とは対極にいる、と俊樹は思っていた。

鮮やかで特別な色の中でもがき泳ぐ華子と、ありきたりで薄ぼんやりとした灰色に浮かぶ自分。

俊樹は漠然と、そう思った。

言葉を交わしたことは無く、これから卒業までこのまま続くだろうと俊樹は想像していたが、それは外れることとなる。

二人の距離は、短い時間で空気のようになるのだが、そのきっかけを作ったのはもちろん華子の方だった。


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