冷たい指・女教師小泉怜香C-3
「……好きな人はいるけど……あきらめようと……思ってる」
「あきらめる……?」
その意味深な言葉に私の心は激しく揺さぶられた。
その相手が「私」かもしれないと思うのは自惚れだろうか。
あの日以来、保健室に足繁く通って来ていたにもかかわらず、私に指一本触れようとしないのは、私が教師で亮が生徒だから―――。
彼が私を「あきらめようとしていたからなのだ」と解釈していいのだろうか。
―――亮。
よくある恋愛小説のように教師と生徒の壁を乗り越えて、あなたがいつか私を迎えに来ることを、私は期待してもいいの……?
探るような気持ちで恐る恐る亮のほうを見ると、亮はいつもの丸椅子に座って、いつものようにぼんやりと中庭を眺めていた。