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恋が始まる少し前
【青春 恋愛小説】

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恋が始まる少し前-2

「なになに、それって同情?」
でなかったらからかわれているに違いない。
「いやいや、愛情。」
にっこり笑う。
「どうせなら、ご飯とか与えてくれる方が元気になるかな。」
ただ今の時刻5時50分。

そろそろお腹が空いてきたし。
「愛ならお腹一杯与えてあげるよ?今月金欠だからご飯はムリ。」
なんなんだ、この人は。
頭の中の思考回路はきちんと活動しているのか?
「ん、と。意味がわからない。」
ついでに頭が痛い。
「だからぁ、さっきから告白してるの。井上さんに。」
「はい?」
「今俺と付き合うと、溢れんばかりの愛情と楽しい思い出が付いてくるよ。」
「…それはすごい。オマケが2つとはかなりお買い得。」
「でしょでしょ?どうよ、俺?」
ううむ、どうよって言われてもどう答えたらいいのやら。

「して、そのココロは?」
本心が見えないことには返しようがない。
こんな嘘か誠かわからないオマケ付きの告白は今までされたこともなし。
「…好きだから、付き合ってほしい。」
あまりにも、真剣に真っ直ぐな瞳で言われたから。
不覚にも顔が赤くなってくるのを感じた。


キーンコーン…。
「っと、残念。図書室閉めて鍵返してこないと。」
帰宅を促され、あたしは慌てて机の上の物を鞄にしまった。
図書室を出る。
「ねぇねぇ。」
鍵を閉めながら呼ばれる。
「何でしょ?」

どうしていいのかわからなくて、まともに顔が見れずわざと顔をそらせたまま答える。
影がちかづく。
―ちゅっ…―
右の頬に柔らかいものが当たった。


それがキスだとわかるまで廊下でぼぉっとしていたが、はっと気付いて
「なっにすんのよ!」
右頬を手で押さえながら、先を歩く根岸君に文句を言う。
「俺、本気だからね。告白もしたし、覚悟しておいて。」
くるり、と振り返り悪戯っ子のような笑顔を浮かべて手を振って行ってしまった。


1人廊下に取り残されたあたし。
「なんなのよ…。」
愚痴ってみる。

きっと、突然だったからって自分に言い聞かせる。
胸の鼓動が速くなっているのも。
顔がすごく熱くなってしまったのも。
キスが…嫌じゃなかったのも。


〜FIN〜


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