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小悪魔たちに花束を
【学園物 官能小説】

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小悪魔たちに花束を【新天地編】第一章 晴嵐編入(前編)-7

  4
 
「あ〜、来た来た、こっちこっち〜!」
「もぅ先生、きてるよぉ〜!」
 ボクたちは皆の声の方に、急いで駆け寄った。
「遅くなって、すぃあせっしたぁ〜っ!!」
 先生に何か言われるよりも先に頭を下げて、適当に皆の後ろに座る。
 あ、藤堂先生の顔が引きつってる。
 そう言えば皆もびっくりした顔してた。
 
 ……………。
 
 ま、いいや。
 それはそれとして、水着のラインがオシリに食い込んで、ちょっと痛い。
「な、鳴海さん。その水着似合ってて、すっごく可愛いよ」
 すぐ前の娘が振り向いて、多少顔を引きつらせながらかけてきた言葉にボクは、恥ずかしくなって立てた両脚の間に顔を伏せる。
 
「鳴海さん、赤くなってるよぉ〜?」
『放っといて欲しいな』
「ホントだ、かぁわいぃ〜」
『ちょっと悲しいくらい、嬉しいかも……』
「食べちゃいたいくらい」
『いいかげんにしてよぉ……』
「コラそこ、静かにしろっ!!」
『藤堂先生、感謝!』
 騒ぐクラスメイトたちを注意する先生に心の中で両手を合わせてると、山岸さんがみんなに向かって言い出した。
「みんな〜ぁ。鳴海さんじゃなくてぇ、鳴海ちゃんだからね〜ぇ」


『また本人に断りもなく』
「『鳴海ちゃん』ね。O.K.!」
『もぉ、勝手にしてくれ』
 
「お前らなぁ〜」
 藤堂先生は力なく、溜め息を吐いてた。
 そんな藤堂先生に、ボクは心の底から同情した。
 そしてボクは、初日からいきなり鳴海ちゃんになったんだ。
 
「えぇいっ!
 今日は背泳の練習をする予定だったが、予定を変えてクロールの記録測定にするっ!!」
 
 あ、キレた。
 
 人間が出来てない奴。
 周りの皆もブーイングの嵐。
 そんな空気を無視して、藤堂先生は話を続ける。
「使用するコースは一コースと二コースの二つ。
 それぞれパートナーを見付けて、一人が泳ぐ時は片方が記録をつけてやれ。
 自分の順番以外は、残りのスペースを使って自由遊泳とする」
『自由遊泳』
 この言葉が出た瞬間に、ブーイングの嵐が嘘のように収まった。
「今日から鳴海くんが加わるから、こっちの方が良いだろう?」
 藤堂先生はにやりと笑う。
 キショい。
 
「やったぁ〜っ!」
『そこまで嬉しいか?』
「センセー話せるぅ〜」
『何が?』
「もぉ、私のバージンあげちゃうぅ!」
『をいをい!?』
 とんでもない事を口にするクラスメイト達に、藤堂先生はわざとらしい咳払いをしただけで聞き流してる。
 どうやら『いつもの事』と慣れてるみたいだ。
 合掌。
 
「一年間通してやってるだけあって、皆やるなぁ」
 記録の測定を行ってる方を見て、ボクは感心してた。
「『やるなぁ』て、他の学校もこんなものじゃない?」
「うんにゃ。二五mどころか、全然泳げない娘とかもいるよ。
 全員が二五m泳げるってだけで凄いと思う」
 ボクの周りを取り囲んでるクラスメイト達にボクは言う。
「それにしてもさ。あの藤堂先生が体育の教師だなんて、思わなかったな」
「藤堂の奴、高校の頃は陸上で何度も全国優勝したらしいぜ」
 その言葉にボクは驚いて、身体ごと久石さんの方を振り向く。
「そ〜なの?」
「らしぃ〜んだけどね〜ぇ。
 どこまでホントの事かぁ、分かんないよね〜ぇ?」
 答えてきたのは勿論、山岸さんだけど、最後の言葉は聞かなかった事にする。
「それが何だって、こんな学校(進学校)の教師なんかやってんの?」
「一度ね、大怪我したんだって」
「それは………」
 その言葉に、ボクは次に言うべき言葉を失った。
「しかもこの学校ってさ、藤堂先生の親戚か誰かがやってるらしいわよ?
 つまり、コネ使って入ったわけよ」
『そ、それもまた気の毒に』
 ボクは賭け値なしに藤堂先生が気の毒になってきてた。
「でもさ、そこがまたい〜と思わない?
 上手くすれば、逆玉よ逆玉!」
「そ〜お?
 あたしはそう思わないなぁ。
 無神経なとこあるしさぁ」
「そぉそ。スケベだし」
『あ〜ぁ、また始まったよ』
「でも男の人はやっぱ、カッコ良くなくちゃ!
 その点藤堂先生は、クリアしてるわよ」
「えぇ〜っ!?
 男はやっぱ包容力じゃない?」
「じゃ、あんたは不細工な男でも、い〜って分けね?」
「じょ〜だんっ!
 勿論、顔も良くなくっちゃ」
 いつの間にか、男の好みになってるし。
「ね〜ぇ?鳴海ちゃんはぁ、ど〜思う〜ぅ?」
 山岸さんの質問に、ボクはしどろもどろに答える。
「ひ、人それぞれなんじゃない。かな?」
「ぇ〜え?それじゃぁ答えになってないよ〜ぉ!?」
 皆、興味テンコ盛りでこっちを見てくる。
『困った……ど〜しよう!?』
 ボクの頬に水滴じゃない、一筋の汗が伝い流れる。


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