電波天使と毒舌巫女の不可思議事件簿 ―堕胎編―-5
「お疲れ様でした。後はこちらで引き継ぎますので」
人間も中絶という名の堕胎を行う。
それが必要悪なのかどうかは、ミュリエルにはどうでもいい。
この処刑が出来るのは、ミュリエルだけだった。
天使としても莫大な力を持っていることを差し引いても、ミュリエルは異端なのだ。
だから、同族にも恐れられている。特位天使、そんな立場の問題ではなく、堕胎という残酷な罪悪を、奉仕という歓びとして行えるという根源的な部分で。
ミュリエルとしても、無理にその感情を否定することはない。あの感覚は、他者には理解できないだろうから。
だから同族たちを少しでも安心させようと、足早にその場を立ち去る。
「……あ、」
外に出て、ずれた次元から元に戻った。雨はまだまだ、ミュリエルを――美由貴を打ちのめすように、容赦なく打ち付けた。
しかし、身体に負担がかかる〔堕胎の刑〕を行ったあとの身体には、むしろ心地いい。
まるで空が代わりに泣いてくれているようで、美由貴は僅かに笑む。
美由貴には、人間のような、或いは上位以下の天使のような感情はないに等しいから、
だから、――真琴に会いたくなった。
真琴の怒ってる顔や、悲しんでる顔や、――笑ってる顔が、見たい。
それが、美由貴の最後に想ったこと。
意識はそこで、途切れる。