煙の思い-2
「それでも、ぼくは…」
その言葉の続きは思い当たらなかった。
けれどその言葉を口にした瞬間、名前が曖昧で、頼りなく、でも確かな感情がぼくの中に湧いた。
それは、煙草の煙のようだった。
その感情が、僅かな風や外気に漂う事にすら耐えられなくて、自らの無駄な部分を削ぎ落とす成長の波に呑まれて、すぐに消えてしまう事がぼくには目に見えていた。
この広くなり過ぎた自らの世界の中で、それを守る事は、きっと、空気から煙を守るようなものだ。
でも、その思いを守る為に、どうすればいいかぼくはこれから考え続けていくだろう。
空気の波に呑まれて消えていく煙草の煙のような思考が、いつかのぼくを形作るかけらとなるのなら、ぼくはきっとそのかけらを集めて、まだ歪になっていない心の隅に大事にしまい込むだろう。
そして煙草を吸い、煙を目にする度に、ぼくはその心の隅に、そっと身を委ねるだろう。
その時だけ、ぼくの心はまだ輝きを保っていたあの頃に戻るはずだ。
まだ子供で、何もかも知らなかった、あの頃に。