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ひみつ
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ひみつ-2

「ほんっとバカなんだから。なんでまた、そんな勘違いを」
「だってさ、高2の時の試合で、手作りのお守りくれたじゃん!」
「あげたよ、マネージャーだもん! 選手全員にね!」
「嘘だろ!? くれたの俺だけだったし!」
「それは、アンタが試合前日の練習にハラ壊したとか言って来なかったからでしょ! 他のみんなには前の日のうちに渡してたの!」
「なんだよ、そのトラップ! 俺はてっきり、」
「アンタのためだけに作ってきたのか、と」
「そうだよ!」
「勘違いもはなはだしい。だからアンタは落ち着きがないって言われるのよ」
「おーおー、どうせ! 幼稚園から小・中・高まで、通信簿に『落ち着きがない』って書かれ続けた筋金入りよ!」
「いばることじゃないでしょーが」
「なんだよ! いじらしいことしやがると思って、ちょっとでも可愛く思った俺がバカだったよ!!」
「わかってんじゃん。バカよバカ。大バカ」
「あぁあぁあぁ、オマエほんっと可愛くないな!」
「別に可愛くなくていいですー」
 ほぼ同時にそっぽを向く。
 すっかり口論。。。でも不思議と、くちで言ってるほど不愉快に思ってないし、ましてや本気であきれてるわけでもない。まあ、少しはあきれてるけど。
 そして、ヤツもやっぱりそれほど怒ってないっことは、ちょっとした口調や場の空気で、なんとなくわかる。
 伊達に10年もコイツのこと見てきたわけじゃない。
 10年―――そうか。もう10年も経つんだ……


「で?」
「『で?』ってなんだよ?」
「どうすんのよ」
「だからなにを」
「いま言ったこと」
「だからどれだよ」
「結婚」
「はぁ?」
 今度は、むこうがあっけにとられる番。
「んなもん、無しに決まってるだろ」
「わー、薄っぺらなプロポーズだこと。これしきのことで撤回しちゃうんだ」
「本気だったよ! 本気だったけど、オマエにその気ゼロなんだから、成立しねーだろ!」
「ゼロかどうかなんて、まだわかんないじゃん?」
「………どういう意味だよ、それ」
 キツネにつままれたような表情の彼。
 あたしは、ぬるくなった缶酎ハイを一気にあおり、なるたけ平静に、言葉を続けた。
「結婚は、さすがに今はムリ。でもさ、そんなにアンタが言うんなら、とりあえず試しにつき合ってみない?」
「え………」
 と、二言目につまる彼に、
「なによ。イヤなら別にぜんぜん構わないんですけど」
 意地悪くニヤニヤ言い放つ。
「いや、待ってくださいっ」
「はいはい」
「『はいはい』って、なんだよその軽さ」
「いいからいいから。で、なに?」
「ぜひ、その方向で」
「なにその言い方。気がそがれる」
「好きだ」
 そう強く言うなり、ぐっとあたしを抱き寄せて、すっぽりと自分の腕の中におさめてしまった。
 だから、いちいち言動が突飛すぎるのよ、アンタは。
 ―――でも、今のはちょっと、良かった……かも。



「「これから、よろしく」」



 ふたりの声が、重なった。
 10年間もともだちだったから、うまく恋人やれるかどうか、まだわからないけれど。
 たくさん笑って、たくさんケンカして。
 そうしていつか、ふたりの人生が重なり合う日が来ればいいな…なんてことを、彼と唇くっつけながら、うすらぼんやり考えてた。
 こんなあたしですが、どうぞよろしく。





 あたしがこの10年間、ずっと彼に片想いしていたことは、永遠に内緒。


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