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ひみつ
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ひみつ-1

「結婚しよう」


 いきなりコクられた。10年来の『ともだち』に。
 彼氏だと思ったことは、この10年間で1度もない。それっぽいことも(ハグでもキスでもセックスでも)ただの1回だってしたことない。
 なのに。どうして。なんだってまたいきなり『ケッコン』になっちゃうわけ?


「……なんなの急に。頭でも打った?」
「いや、別に」
「じゃあ、なんかの冗談?」
「冗談で結婚申し込むほど軽い男じゃない。…と思ってるんだけど」
「じゃあなに? あたしのこと、おちょくってんの?」
「……なんで本気だと思わねーんだよ」
「なにをどうしたら本気だと思うのよ」


 ほんっとに、コイツの行動は読めない。わけわかんない。
 だいたい、だ。今のこのシチュエーション自体おかしい。
 コイツが『居酒屋で飲んで、そのあと徹カラとか行くくらいなら、こっちのが安くあがるしラクだから』なんて言うもんだから、
 ああ確かにそうだなぁ。酒とつまみスーパーで買っていけば、あとは部屋代だけでカラオケもゲームもできて、テレビも映画も見られて、お風呂も入れてベッドもあって、楽チンかも。なんて。ホイホイついて来ちゃったけど。
 いや、やっぱおかしいよね? なんだってあたし、コイツとラブホに来ちゃったんだ?
 しかも、ラブホであぐらかいてサシ飲みしてる最中のプロポーズて。


「バッッッッッッッッッカじゃないの?」
 思っきしためてためて、言い放つ。なのにヤツは、ピクリとも動じることなく、言ってのけた。
「もういいかげん、お互いに意地はるのやめようや」
「はぁ?」
「あまのじゃくなオマエがそう返してくるのなんか、はなから予想済みだっつの」
 と、鼻高々のてい。
 ……マジでなんなんだ。なんなんだコイツ。
「だーかーらー、いったいなんの話……」
「オレ、ずっとオマエのこと好きだったんだけど」
「―――――――――」


 あたしは、不覚にも言葉につまってしまった。
 いつもだったら、軽口で返すトコなのに。それか、一発どつくか。悪態つくか。あ、ノリツッコミという出方もあるわ。
 なのに。あたしは、どのアクションも起こせなかった。
 あまりにも彼の目が真剣で。言葉が、心にまっすぐささったから。軽い動揺すらおぼえた。なのに、


「オマエだって、俺のこと好きだったろ?」
「……はい?」


 あまりの自信家発言に、動揺なんかあっという間に霧散した。
 なんだそれ。あたし、そんなそぶり、チラともキミに見せた覚えはないけど。
「え、マジで!? 俺、てっきりそうなんだと思ってたのにっ」
 ホントに本気でうろたえ始める彼。それが、あまりにも滑稽で。そしてなんだか、ちょっと『かわいいなぁ』とか思ってしまったり。そんな感情は、おくびにも出さないけど。


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