桜色の約束-2
「私、行って聞いてみますね。コーヒーごちそうさまでした!」
「いえいえ。ではお願いします。」
私は急いで階段を駆け下りた。特に急ぐ必要はなかったのだが、彼の桜の木を見上げる姿があまりにも美しく、そして哀しげに見えたせいか、無意識に走っていた。
「はぁっはぁっ…あれ?」
いないや。
帰ったのかな?
私は少し残念に思いながら息を整え職員室に戻ろうとした。すると、どこからともなく声がした。
「俺を探してるの?」
透き通った綺麗な声。
反射的に振り替えった私の前に、あの彼がいた。
「セーンセ」
そう言って微かに微笑む彼に、私は見とれてしまった。
高校生とは思えない大人びた表情と、今にも消えてしまいそうな透き通った肌。校則違反まではいかないが艶のある美しい焦げ茶色の髪に、心の中を全て見透かしているよそうな強い眼差し。
あまりにも綺麗すぎた。
そして――
一瞬にして私のハートは奪われた。
25歳独身、相澤桜。新しい世界に飛び込んで、1日弱。
――高校生に惚れました。