想-white&black-B-4
キスの経験すらなかった私は呼吸もできずにだんだんと息苦しくなり、頭の中が朦朧としてきていた。
噛みついてやろうと思うのに、舌の奥が痺れるような口づけにただ翻弄されてしまう。
人並みにいつか好きな人とのキスを夢見ていた私には衝撃が大きすぎて、心のどこかにひびが入ったような気分だった。
ようやく離れた互いの唇の間には混ざり合った唾液の糸がツ……と伸びて切れていった。
「くっ……、そんな顔をされると尚更苛めがいがあるってもんなんだがな」
目を細めながら私の顔を見つめて心の底から愉しそうな表情を浮かべている。
自分が一体どんな顔をしているというのか。
だがそんなことよりも半酸欠状態の私は息が乱れ、肺一杯に酸素を取り込もうと大きく胸が上下する。
「キス一つでなかなかいい顔をするじゃないか。これから先が楽しみだ」
わざと耳元で囁き、熱い吐息でくすぐってくる。
そしてスルリと背中に手が滑り込んだかと思うと着けていたブラのホックを意図も簡単に外されてしまった。
グイッと上に押し上げられ他人の男に見せたことのない胸が零れた。
「やあっ……!!」
楓さんは無造作に下から上へと撫で上げ、柔らかだった左右の乳首を尖らせる。
形が変わるとそこを摘んだり、指でなぞったりして執拗な刺激を加えてくる。
いきなり直接的な刺激に痛みと嫌悪感で眉を寄せ、唇を噛み締めた。
すると今度は乳房を掌で包んだかと思うと、ゆっくりと揉み始めてきた。
時々乳首への遊びを付け加え、その内に不覚にも触られている所から怪しい感覚が込み上げてくる。
何だか分からないが、腰の奥が痺れるような感覚に私は思わず狼狽していた。
「ふうん、大きくはないがいい形してるな」
「やだぁっ、そんなの知らないっ……」
私は恥ずかしさと悔しさと恐怖心が混ざった顔を横に背けた。
こんな自分の姿や表情を全てこの男は見ている、そう思うだけで舌を噛み切ってしまいたかった。
「ひぁ……っ」
不意に胸から離れたかと思うと、冷たい指先が脇腹に触れて思わずビクッと身体が跳ねた。
「痛っ」
それと同時に楓さんの唇が私の首筋寄せられ、鎖骨や胸元にも何ヵ所も赤い印が刻み付けられていく。
それは微かな痛みを伴って私の肌を染めていった。
抵抗したくても縛られた手と身体の上に覆い被さる男の重みで身動きがとれなかった。