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バッドブースター
【学園物 官能小説】

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バッドブースターU〜姉とメイドと心の浮気〜-3

 翌日、月曜日の昼休み。
 佑助は、友人達と平穏に食事をとっていた。
 そう、あくまでも平穏に。
 いつもならば、こんなに心安まる食事はありえないのだ。
 佑助にとっては、藍と一緒に昼食をとるのが本来の昼休みだ。
 藍お手製の弁当を冷やかしとからかいの中で小さくなって食べたり、藍に『はい、あーん』という恋人の伝統奥技で食べさせられたことにより、クラスの男子に十秒でギタギタにされたり、『あーん』を拒絶したがために藍の親友の平山尚子に七秒でギタギタにされたり、周囲の視線に耐えられなくなって逃げ出して、昼休みの終りに帰ってきたところを藍に五秒でギタギタにされたり――
 付き合い始めてからもう一ヶ月以上経つというのに、毎日毎日飽きもせずギタギタギタギタされていたというのに、今日は恒例のギタギタイベントが発生していないのだ。
 理由は、藍がいないからである。
 現在、佑助が口に運んでいるのは、藍の手製弁当ではなく、コンビニおにぎりだ。
(ああ、平和ってスバラシイ……)
 恋人の不在を喜ぶ酷い彼氏は、束の間の安らぎを楽しんでいた。
「――で?」
 後ろから聞こえた声にふり返ると、平山が腰に手を当てて仁王立ちしていた。
 今日は長い髪を一つにまとめている少女を見ながら、
(あー、前にもこんな事あったような……)
 呑気に軽い既視感を覚える佑助だったが、
「なーんで藍が今日休んでるのか、是非とも訊きたいんですけど?」
 パキパキと空手有段者が指を鳴らしながら訪ねてくる様子に、その既視感が何であったかを思いだし、全身を石のように硬直させた。
「え、えーとですね……」
「あの真面目な藍が、あんた以外の理由で学校を休むなんてまずないハズなのよねぇ」
 何故か敬語になってしまう。
 たしかに平山の言う通り、藍は特別な用事があったり、体調を崩したりしない限り、学校を休むということをしない。また、休む時は、藍は平山ないし佑助に連絡を入れる。よって、昼休みにもなって欠席の理由が不明というのなら――
「あんたに原因がある可能性が一番高いんだよなぁ? 少年?」
「はいっ! そうですね! 俺は少年です!」
 佑助は迫りくる恐怖にパニックを起こしながら、藍の欠席の原因を考える。
 昨日の逢瀬の時から機嫌が良くないのは分かっている。けど、それだけだ。
 パニックもおさまり、さらに一人思考を巡らせていく。
 藍が発した言葉――『浮気者』――を聞いたのは、昨夜が初めてではない。
 以前、佑助の自宅でアダルトビデオを発見された時(佑助は一人暮らしなので、当時は官能的要素を含むモノを隠す必要性に乏しかった)も、同じ言葉を聞かされた。
 その後、佑助がバイトに行っていた間に、家に存在していた全てのアダルトビデオが処分されていた。
 そこまで思い出して気付いた。
 今の状況は、その時に酷似している。つまり、今現在、藍がとっている行動は……
「あーー……」
 そうだ。多分そうだ。今頃彼女は俺の家で今回の発端となった、エロ本を漁っているのだ。
「やっぱり……あんたが原因か」
「うん……まぁ、そう、だな」
 剣呑極まる平山の雰囲気に、思考に没頭していた佑助は気付かなかった。
「くたばれ佐々木ぃぃぃぃ!!」
「うぎゃあああああ!」
――今日は、二秒でギタギタにされた。

 ところ変わって――こちらは藍。
 藍は、バックの中から一つの鍵を取り出した。目の前に鎮座する佑助宅のドアを開けるためのものだ。
 佑助のいない間に来るのなら明日のバイトの時でもよいのだが、それだと目当てのモノを隠されてしまう可能性がある。だからわざわざ学校をサボってここに来ているのだ。
(こんなことなら、昨日泊まっておくべきだったかな……)
 本来なら昨日は、佑助と体を重ねた後、そのままこの家に泊まり、今日は二人で登校するはずだったのだが、機嫌を悪くした藍は荷物を持ってさっさと帰ってしまった。
 その時の情景を思い出した藍の心に、ムカムカが募ってくる。
 そもそもエッチ控えようって言い出したのは佑助君の方なのに、私だってしたくてたまらなかったんだから、誘ってくれてもよかったのに、変なプライドにこだわっちゃって、一人で――それだけならまだいいけど、よりによって他の女で……!
 胸中に怒りをマグマの如く滾らせながら、鍵をねじ切らんばかりに勢いよく回す。引き戸に手を掛け、ガラガラという音と共に横に滑らせると、物があまり置かれていない、寂しげな玄関が視界に入ってきた。
「よしっ」
 わざわざ気合いを入れる。
 やるぞ。家宅捜索だ。証拠物は必ず見つけてみせる。
 警察官の如き決意だったが、見方を変えてみれば、住人が不在の間に家に入り込む泥棒のようにも見えた。


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