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……タイッ!?
【学園物 官能小説】

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……タイッ!? プロローグ「覗いてみタイッ!?」-14

「お願い、行かないで」
「どうしたの?」
「なんかね……、寒いの。ほら、震えてる……」
 換気扇から差し込む光に照らされる里美の肩は、よく見ると小きざみに震えていた。
 今は四月の終り。最近はたまに寒くなることもあるが、今日は震えるほどでは無い。だから、理由もわかる。
「うん。わかった。じゃあ、ドア、開けとく?」
「締めて……あと、鍵も……」
「鍵も?」
「あいつらが戻ってきたら困るし……」
「ウン」
 重いドアを閉めて錠をかける。より強度な密室となるも、先ほどの興奮は嘘のように和らいでおり、紀夫の愚息も元気が無い。
「あ、あのさ……」
「ゴメン話しかけないで……」
「あ、ゴメン」
 気丈な彼女でも、やはり……。
 里美は背中を向けたまま体育座りでいる。なのに紀夫が一歩でも近づこうとすると、「来ないで」切なそうに呟く。金切り声で言われたら今度こそ出て行くのにと思う紀夫だが、しっかりとつかず離れずの距離を取らされる。
 そして沈黙。
 数秒程度でも重く圧し掛かる。
 全ては強姦未遂の所為。
 自分は何も間違ったことをしていない。覗いていたのはおかしな行為だが、結果助けることに繋がった。
 だが、何故こうも陰惨たる空気に晒されるのか?
 気を使おうにも会話自体拒否される。かといって傍に行って何を出来るでもない。
寒いと言うからといって、ブレザーを着せてあげるのも季節的におかしな行為。そもそも自分のキャラではない。
 紀夫は仕方なく気晴らしにと、できる範囲で掃除を始めることにした。
 運動会で使うような角材は脇に避け、錆びの目立つ支柱に絡むネットを解きながら巻きなおす。
 ゼッケンやボールを色で分け直し、ついでに穴の開いたボールを取り除こうと、ちょっとだけ彼女のほうへと歩み寄る。
「ねえ……」
「はい!」
 近づいたのを咎められたとおもった紀夫は直立不動の姿勢になり、定位置に戻る。
「あのさ、やっぱ……、ありがと……」
 しかし、続く言葉は拒絶ではなく感謝の気持ち。
「ん? あうん……」
 ありがとう。
 たった一言なのに、なにかが変わった気がした。
「ねえ、なんであんなことになったの?」
 だから自分から声をかけてみた。もちろん、里美から話し掛けてきたとはいえ、まだ声に張りが無い。刺激しないように出来るだけ抑えて言葉を選んでのことだ。
「うん……それがね……、男子、あー、どこから説明すればいんだろ」
「落ち着いて……、ゆっくりでいいよ。僕も倉庫掃除してるから」
「えっと、あたし、陸上部なんだけどさ、男子が部室でオナニーしてて……」
「うん」
「それで、愛理先生とあたしで現場をおさえたんだけど、先生、佐伯とセックスして……」
「うん?」
 話が飲み込めなくなり始めた紀夫は思わず反芻してしまう。
「けど、そのことばらされたくないなら、お前がオカズになれって……それで、無理矢理ここにつれてこられて……」
「え? え? どういうこと?」
 部室での性行為を覗かれたのが里美だったというのであれば脅迫のネタにもなるだろう。しかし、他人のセックスをばらすというのはいかがなものか?
「それで、あたし、怖くて、君が来てくれなかったら……今頃……、いやあああああ!」
 腕を抱く手を解き、頭をかきむしる里美は、先ほどの出来事を反芻するどころか飛躍させたらしく、軽いパニックを引き起こす。
「香山さん、落ち着いて! 落ち着いて……、ね? ね? ね……」
 一方、その豹変ぶりに驚いた紀夫は彼女に駆け寄ると、訳もわからずただ彼女を抱きしめていた。
「ああああん! うわああああん! うっぐ、えっぐ、怖かったよぉ……助けてよぉ……」
「大丈夫、もう大丈夫……」
 胸元をドンドンと叩く里美は容赦も遠慮も無い。
「だって、だって! 男の子、うえっぐ、乱暴で、ひっぐ、酷いこと言ってくるし、それに、それに、うわあああん……」
「あ、あの、香山さん、もう少し、弱く……お願い……しま……あたっ!」
 叩く手がグーを握った頃、紀夫は床に押し倒され、バリバリと肩口を引っかかられてしまった。


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