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イヴの奇跡
【その他 官能小説】

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イヴの奇跡V-10

『…イヴと同じような奴がいるのか…。』

イヴと同じ体験をした物がいるかもしれないと言うことを聞くも、神崎は至って冷静だった。
彼なりに少し驚いた様子だが、想定内の出来事であったらしい。

『もし…私が本当は猫だったって世の中や圭の周りの人間に知れたら…圭が……どうしよう…私っ…どうしたらっ』
イヴは戸惑いを隠せない。

自分より神崎に伴うリスクの大きさを考えれば不安は募る。


暫く沈黙が流れる。


そしてコホンと小さく咳ばらいをして最初に沈黙を破ったのは神崎だった。


『…お前が居るんだ、他に居ても不思議ではないだろうな。ただ、俺はイヴが何であろうと、他人にお前の存在を知られようと気にするつもりはない。』
イヴを抱きしめ神崎はそう告げた。

『お前には自分の意思を伝える言葉もあるし、俺を抱きしめる腕もある。姿形はどこからどう見ても人間だ。他に何も必要なものはないし不必要なものもない。』

『圭ぇ……』
神崎の言葉にイヴは涙が溢れそうになる。

『お前は今のまま、俺の側に居てくれればそれでいい…余計なことに惑わされるな。』


『…うんっ!!』
声が震えるイヴ。

イヴもまた神崎の側に居ることが出来るのなら他人などどうたって良いと思っていた。
だが、神崎は会社の社長であり、世の中でも名の知れた人間…下手に自分の存在や素性が知れれば誰でもない神崎の迷惑になる。

しかし、神崎はそれで構わないと言った。

その言葉はイヴにとって何よりも嬉しい言葉であり、神崎の胸の中、静かに涙を流した。
そんなイヴを気遣い神崎は何も言わず背中を撫でる。



イヴの存在はあまりにも非現実的だ。化学や理論的には許されない存在であり、説明しようにも二人以外の存在が信じてくれるはずもない。

体験したイヴと神崎の二人にしか分からないものなのだ。


しかし、二人以外にもこの非現実的存在を知るかもしれない者がいる…。


自分達以外の何者かが“何か知ってるかも知れない”ことへの期待と不安が二人の心を少しだけ掻き乱した一日だった。





気がつけば外はもう真っ暗。
時刻は21:00を過ぎたところだ。


『さ…帰るか。』
ふと自分のデスクに目をやる神崎。
山積みの書類は突然の訪室者のお陰で一枚も片付かなかった。

(明日は残業だな…)
そう心に決めて二人は会社を後にするのだった。


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