エリザベス・悲劇の人形たちV-1
街の医療センターへ運ばれたマルセルだが、ずっと意識不明になったままになっていた。
脳に、何らかの障害が起きたのが原因と考えられるようだ。
主治医の話しでは、意識が戻るのはいつになるのか分からないと言う。
マルセルは集中治療室のベッドにいた。
吸引器を付けたままの痛々しい姿にグロリアスの気持ちは穏やかではなかった。
再び、姉の自宅を訪れたグロリアスは人形部屋の前に立った。
部屋のドアは開けたままで、中の人形たちの様子が伺える。
丁度今、エリザベスと子供人形たちの語り合いの最中である。
「私ノ、可愛イ可愛イ、子供タチ!」
エリザベスママが両手を顎の所で広げると、子供人形たちは元気な声で返事をする。
「ミャミャーッ!」
「私ノ、可愛ィ可愛ィ、宝物!」
「ミャミャーッ!」
「私ハ、ダアレ?」
「ミャミャーッ!」
子供人形たちはピョンピョンと飛び跳ねて、抱っこをせがむ。
「可愛イ、可愛イ!」
笑顔笑顔で子供人形たちを抱きしめるエリザベスママ。
「ミャミャーッ、大好キーッ!」
「ワタシモ、ミンナ、大好キヨォ」
「幸チェーッ!」
「私モ幸セ。コレカラモ、ズットズット、幸セ」
「…」
グロリアスは子供人形たちが着ている衣装に注目した。
デザインや柄…共にママとお揃いのワンピースを着ている。
フリルの付いた赤の可愛いドレスだけど、フリーラムランドで一番有名なブランド物の生地を贅沢に使った衣装だ。
人間用なら相当な値段が張る高級物だが、人形用でも例外ではないだろう。
人形部屋は約20畳分ぐらいの広さで、奥に子供人形用トイレや浴室が付いている。
ベッドやチェスト、ソファー、テーブル、本棚等の家具や調度品類全て、高級品。
カーペットも、一流の絨毯職人に発注した特注品である。
全てが贅沢品に囲まれているから、より華やかな雰囲気に見える。