エリザベス・悲劇の人形たちV-2
子供人形1体が大きなアクビをした。
ルルだ。
「ミャミャー、眠チャイ…」
他の子供人形もルルに合わせるように、大きなアクビ。
「サァ、オ風呂二、入ッテ、寝マショウ」
「ミャーイ!」
子供人形たちがグッスリと眠る頃…
エリザベスはグロリアスにキッチンに呼びつけた。
食卓の椅子に腰掛けるエリザベス。
懐には、キディがいつものように乳首をくわえたまま、スヤスヤと眠っている。
グロリアスは厳しい表情で目の前の椅子に座った。
緊張した表情のエリザベスを威圧するように腕を組み、しっかりと見つめる。
「私の姉さん、マルセルは…しばらくウチにいないから」
「イナイ?」
グロリアスの表情を見て、エリザベスは事態の深刻さを察知した。
だからと言って…
「脳に何らかの障害が起きて、姉さんは意識不明で倒れたの。今もずっと昏睡状態のままだし、いつ意識が戻るか分からないわ」
「分カラナイ」
「姉さんは街の診療所にしばらく入院する。
だから当分の間は、この屋敷は私が管理する事にしたから。勿論…
アンタの世話は、私がしなくちゃイケない」
「…」
「アンタに質問する。
アンタは姉から広い部屋を与えられ、高価な家具や着る物、30人もの小さな人形たちを全て買ってもらっているわね?
そして毎日、美味しい物を食べてノンビリと暮らしている。
子供たちの方は、優しいママに甘えながら美味しい物をイッパイ食べて楽しく遊んで暮らしている。そんな贅沢三昧の生活が許されている事、アンタはどう思ってる?」
エリザベスは感激の笑顔で答える。
「豪華ナ生活、トッテモ嬉シイ。私ヤ可愛イ可愛イ子供タチ、幸セ」
グロリアスはクールな笑顔を見せる。
「ふーん、幸せなの。
それは結構な事ね」
皮肉っぽい言い方であるが、エリザベスは理解していない。