reality ability‐第11話‐終わりなき絶望、始まりなき希望‥‥‐-1
‐2時間前、第一世界・始永界の天命城の一室‐
統神 晴那はバルコニーにいる。そこから真剣な表情で景色を眺めていた。
「‥‥始まったわね。‥‥勝つと思う?“イレギュラー”は?」
ふと呟く。独り言ではなかった。統神 皇希が部屋の中にあるソファーに座っていたのだ。彼は答える。
「‥‥奴が“アイツ”に導かれたなら当然だ。‥‥“繰り返される運命”は3度目に解放されるとはな。」
統神 皇希の視線は真っ直ぐなのだが、何処か違う所を見ながら言った。晴那はそれを確かに感じている。
「‥‥貴方も“知っている”訳ね?“全て”を‥‥。」
晴那は振り返って彼を見た。その表情には人を斬る事が出来る真剣そのものだった。
「‥‥“全て”は知らないが、ある程度は“解放”された。‥‥これも“アイツ”の思惑通りだろうな。」
彼はそう答えた。晴那は少し考えて納得した。だが、少し納得出来ない事があるらしい。
「‥‥ねぇ、“アイツ”って誰よ?」
統神 皇希はチラッと晴那を見た。彼女はまるで子供のような無邪気な表情で答えを求めていた。彼は溜め息を吐いて喋る。
「‥‥はぁ。仮にも最高の“天命神”がそれじゃあ、呆れて何も言えないぜ。」
それを聞いた晴那の次の表情は子供のようにムッとした。
「悪い?私は貴方が知っている通りの行動しか出来ないのよ。‥‥で、誰よ?教えなさいよ。」
流石は皇希の未来といったところか‥。話題を逸らすように言ったが、晴那には効かなかった。
「‥‥ちっ、そういう所はしっかりしてるのか。‥‥だが、教えられない。教える勇気もないし知る覚悟もないだろう?」
「‥‥‥」
統神 皇希は晴那を鋭い視線で刺す。晴那の表情には知る覚悟がないのが確かに解った。
「奴が話してくるのを待つんだな。‥‥数年後、奴は全世界のあらゆる力を使いこなすだろうな。」
統神 皇希は凄い事を言った。奴とは今の自分‥‥第3の皇希の事だろう。数年後には“更なる力”を持つ事。
晴那は眉間にシワを作った。その表情からは‘何で知っているの?’と物語っていた。それを察した統神 皇希は喋る。
「‥‥不思議ではない。“全て”に愛されてる奴は正に“神の王”に相応しいからな。」
統神 皇希は立ち上がり晴那の隣まで歩く。そのバルコニーから景色を眺め始めた。
「‥‥‥。貴方は彼の事を嫌っているんじゃないの?」
晴那を不思議そうに言った。嫌っているような感じは確かにあの時に放っていた。
「‥‥‥。嫌っている。が、別にそこまでではないさ。奴は独りぼっちだ。‥‥織音が居ればその問題もなくなる。全ては‥“グラウンド・ゼロ”の思惑通りだ。」
統神 皇希の左目がうっすら輝き、その瞳には星の形をした刻印が刻まれていた。