けんぽなし〜カット〜-1
「ねぇ〜あの服かわいいねぇ〜…」
円が私の腕に絡みついてきた。
「う…うん…」
ここまで来た当初の目的を彼女は覚えているのだろうか…??
2週間…
円はあれから薬をしていない…
それは私が考えるよりずっと辛いことなのだろう…
家に1人でいては辛いからと、学校が終わると太一の家へ来るようになっていた。
「あっ、あったぁ〜 …中央病院!!」
ドクンー
ー…松ぼっくりが…あったとさー…
私、どんぐりを握りしめ、ためらいなく病院に足を踏み入れる円の後ろ姿を見つめた…
昨日…太一の家に耕太郎が久しぶりにやってきた…
「さくら」と同じクラスに絵梨沙(えりさ)がいるという情報と
その絵梨沙が今、入院しているという情報をもって…
「なーにやってんの〜…行くよぉ〜」
!!っー
円に腕を引っ張られ、私はそれに従った…
どうして…?
昨日から私の頭の中にはその言葉しか浮かんでこない…
絵梨沙は…
自分で…
手首を切ったのだ…
「緊張してるのぉ〜?絵梨沙ね〜今回が初めてじゃないよぉ〜…中学の時も何度かしてるからぁ〜…」
「えっ…」
円は立ち止まると、私の方へ体を向けた。
「どうする?帰るならまだ間に合うよ」
ドクン…ドクン…
円の言葉が私の胸にのしかかり、ムカムカと吐き気がする…
私は汗ばみながらどんぐりを握りしめ、どうにか首を横に振った…
だって、もう、逃げないと決めたから…
そんな事は私の自己満でしかないのかもしれない…
自分が苦しみたくないだけかもしれない…
結局…私は自分の事しか、考えていないのかもしれない…
野田 絵梨沙(のだ えりさ)
病室の名前を見て私の足は、また、止まってしまう…
息が…
うまく、出来ない…