けんぽなし〜カット〜-4
ー………
「昨日…砦に会って…」
「で?」
「…万引き…してた…」
「だから?」
ー…え…
「だから?砦が何をしてたって私には関係ないでしょ」
「でもっ…私達…」
「ちょっと、やめてよ、保育園が一緒だったってだけでバカじゃない?」
ー………
「…私は…」
言葉を詰まらせる私に、絵梨沙は苛立っていた。
「あのさー、人の事なんて考えてる暇ないからっみんな自分の居場所を確保するので精一杯でしょ、あんただってそうなんじゃないの?だいたいさ〜何でここに来たの?何?同情?…私を見下ろして気持ちいいわけ?用がないなら帰って!!」
「………」
私はゆっくり立ち上がった…
何も出来ない自分が悔しい…
何も言えない自分が悲しい…
何もしない自分が情けない…
ポケットの中のどんぐりを握ると、一度背を向けた絵梨沙に向き直った。
「何があったのか、私は知らないし、私には何も出来ないかもしれない…でもっ、私、みんなと笑いあいたいのっー…私はもう、逃げたくないのっー」
それが精一杯だった…
今の私の精一杯…
私、早足で病院から出ると、大きく深呼吸をした。
翌日
今日が退院だと、絵梨沙は言った…
帰って、と突き放した私に…教える必要があったのだろうか…
そんな事を考えていたら、学校どころではなくて…私の足は病院へと向かう…
「はぁ!?何よ…」
絵梨沙の呆れた声と顔…
退院の荷造りを1人でしていた絵梨沙…
「母さん…は?…」
たまらずに私は聞いてしまった…
「仕事」
ぶっきらぼうに返す絵梨沙…
「そっか…」
私は荷造りを手伝い、退院のもろもろを済ませて、一緒に病院を後にした。
「見張ってなくても今日はしないからっ」
病院を出てすぐ、絵梨沙は言った。
「ーっ……そういうわけじゃないけど…」
「じゃあ、何?…もう気がすんだでしょ、学校までサボって…ウザイんですけど」
ー……
「…だよね…だけど…どうしても気になって…」
「…あのさー、自分の自己満のために私を使わないでくれる?」
「え……」
「可哀想な私を助けてあげてる自分が素敵なんでしょ、それとも何?自分より下にいる人間を見下ろして安心したいわけ?どっちにしても自己満じゃない!!」
絵梨沙が私の肩を、突き放すようについた。