投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

けんぽなし
【その他 恋愛小説】

けんぽなしの最初へ けんぽなし 19 けんぽなし 21 けんぽなしの最後へ

けんぽなし〜カット〜-3

ー痛っ…

「砦(さい)!!」

ー!!っえ…

「…っーどけっ!!」

砦は私達を押しのけると、凄い勢いで走り去って行った。

「こらぁっ!!待ちなさいっ!!」

その後を追うように店員が店から飛び出してきた。

砦を見失った店員は舌打ちをしながら戻って、
「スミマセンでした」
ぶっきらぼうに私達に頭を下げると、店に戻ったいった。

ー…何……?…

「万引きでしょ〜…」
私の思考を察したように、円が言った。
「え…?」
ーそんな…


「あんまりいい学校だったとは言えないんだよね〜…私達の中学…」

太一の家に戻ってきた私達は、今日あったことを太一と空に語った…

「私と絵梨沙と砦…が、同中だったんだけど…本当に、あまりいい学校じゃなくて…」

円は、言葉を選んでいるかのように、ゆっくり、ゆっくり話す。
「…絵梨沙は…何度かリストカットを繰り返してて…砦も…ちょっと悪い子達と一緒にいたし…私も…」
円は、そう言うと口ごもり、うつむいてしまった…

「…ネットいじめとか…結構あったし…みんな…誰も信じられなかったの…」

それでも、話を止めない円…

円のブログの一文が思い出される…



………助けて……



あの頃は…
保育園でのあの頃は、やっぱり色々あったけど、それでも私達は楽しかった…
一緒に笑って、一緒に泣いて、一緒に遊んで、泥だらけで、慰めあって、励ましあって、応援して、喜んで…

あの頃のように、みんなで笑い合いたい…
そう思うのは…
難しい事なのだろうか…

星野 砦(ほしの さい)
四人兄弟の末っ子で、いつもにこにこしてて、争いがきらいで…

そんな砦が、万引きをしてるなんて…
私はどうしても、どうしても信じられなかった…

中学での事を語った円…

もしかしたら円も私と同じように、何も出来なかった自分を責めているのかもしれない…

私が太一に感じてた思いを、背負っているのかもしれない…

翌日、私は絵梨沙の病院へ来ていた。

「何?明日はもう退院なんだけど…」

絵梨沙は私をチラリと見て、手にしていたマンガに視線を戻した…


けんぽなしの最初へ けんぽなし 19 けんぽなし 21 けんぽなしの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前