けんぽなし〜カット〜-2
「円?何してるの?」
ドキッー
ーえ…
突然、後ろから声がした。
絵梨沙だ…
絵梨沙は13人の中で一番早い生まれで、『お姉さん』そんな感覚だった…
「絵梨沙〜…お見舞いだよぉ〜」
円、絵梨沙に駆け寄った。
「はぁ!?」
絵梨沙、円の顔を押しのける。
私は…
言葉がみつからない…
「…さっきから思ってたんだけど…」
ドキッー
絵梨沙の目が私に向けられた。
「ぁ…」
「瑞希?」
ーっ…
私、言葉の変わりに大きく頷いた。
「何ー?全然変わってないじゃん!!びっくりなんだけど」
明るい笑い声が頭から降ってくるようで…
私はますます言葉を失ってしまった…
どうして…?
その言葉ばかりが頭に浮かぶ…
ずっと憧れだった…自分の考えを、思いを口にして、実行して…
そんな絵梨沙に、私はずっと憧れてたのだ…
こんなに明るい笑顔で、こんなに明るい声で話す絵梨沙…
なぜ、自分を傷つけるのか…
なぜ、血をながすのか…
彼女は…
生きることを拒否したいのだろうか…
いや…
もしかしたら…生きることを、生きていることを感じたいのかもしれない…
私は、絵梨沙の左手首に巻かれた包帯を見ながら、ぼんやりとそんな事を考えていた…
病院を出た私達は、なぜか無言だった。
結局私は絵梨沙に何一つ言葉をかけることが出来なかった…
今のこの沈黙は、円が私を責めているようで…私は、ただひたすらにどんぐりを握り締めていた…
ドンっー
「きゃっ!!ー」
ドラッグストアの前、勢いよく出てきた人にぶつかってしまった…