Plunged-4
「あのォ、先生…」
困った顔、甘えた声。まさに田沼好みの少女を演じる由香。
「私に何か用かね?」
自分好みのシチュエーションに、これ以上無いほどの笑みで答える。
「新聞部の野々下ですが、今月から特集で先生方へのインタビューを取り上げようと。
それで、最初に田沼先生が選ばれまして…」
「私が…?」
由香の言葉に、田沼は怪訝な表情を浮かべた。
その途端、由香はさらに田沼に迫った。互いの息が掛かる距離で。
「あ、あのォ、それでェ、何時頃お時間頂けるでしょう?」
彼女の態度をどう捉えたのか、田沼は表情を緩めた。
「そのインタビューは、どのくらいの時間を取るのかね?」
「え〜、そうですね…15分くらいです」
由香は、用意したノートを開いて確認するふりをする。
田沼は、少し考えるふりをしてから笑顔を向けた。
「分かったよ。インタビューを受けよう」
「うわあッ!ありがとうございます!」
許しをもらい、嬉しさから破顔して何度も頭を下げる由香。
しかし、手放しで喜ぶ由香に対して田沼は申し訳なさそうに云った。
「ああ…すまない。今週は、色々雑務が溜っていて遅くなるんだった…」
「あの、それって何時頃終わるんですかァ?」
「そうだなあ…7時位になるかな」
──そうやってコイツは…。
田沼の手口を知って、由香は怒りを覚えた。が、そこを押さえて、
「だったら大丈夫ですッ!私、部活が6時半までですから、待ってます」
「そうか。じゃあ、すまないが宜しく頼むよ」
話がまとまり、由香は嬉しそうに職員室を後にした。
──また、ヤレそうだな…。
田沼もまた、口の端を上げていやらしい笑みを垣間見せた。
「スッゴく気持ち悪くて…」
田沼との接触を終えた由香は、部室の中で涙ながらに麗香に報告する。
「話してる最中、ずっと私の身体を見て…」
「あんたの恨み節はいいからさ。要は上手く云ったの?」
麗香は要点だけを訊ねる。
「それはバッチリです。今夜7時にインタビューを取り付けましたから」
「ヨシッ!じゃあ段取り通り、こっちも準備するわよ」
麗香の号令の下、すべての部員が対田沼に動きだした。