Plunged-2
「…うッ…せ、先生に相談があるからって…ええッ…そしたら…放送室に…うッ…連れて行かれて…」
少女は、嗚咽混じりに理由を語る。それを、部長である朝霧麗香は気だるい気持ちで聞いていた。
「…私…あんな目に遇うなんて…」
麗香の前で、すべてを語った少女はその場で泣き崩れた。そんな彼女に、新聞部々員であり少女の友人である野々下由香が手を差しのべる。
「泣かないで。あなたの無念は、きっと部長が晴らしてくれるわ」
──なんだ、こりゃ…まるで3文芝居のような…。
一連の2人のやり取りに、麗香は軽い眩暈を覚えた。
「とにかく、理由は分かった。力になれるか分からないけど、出来る限りのことはするから」
少女は、麗香の言葉を聞いて安堵したのか、柔らかな笑みを浮かべて部屋を後にした。
「こらッ!由香」
彼女の姿が消えた途端、麗香の叱責が由香に飛んだ。
「何であんな娘の尻拭いを私に持ってくんのッ!そんな話は生徒会にしなさいよ!」
目をつり上げ、激しい口調で責めたてる麗香に由香は怯えた顔で言い訳する。
「で、でも、あの娘、私のクラスメイトで…可哀想になって…」
由香の訴えを聞いて、麗香は鼻を鳴らして笑った。
「由香、あんたも人が良いわね。あの娘が本当にレイプされて悩んでいると思ってんの?」
由香の顔色が変わった。その目が麗香を睨み付ける。
「いくら先輩で部長の麗香さんだからって、聞き捨てなりません!彼女は私の友人で、私を頼って来たんですよッ!」
必死の形相。それを見た麗香の顔はフッと緩んだ。
「あんたの友達思いな気持ちは分かるけど、あの友達はそうは思ってないわよ」
「なんでそんな事が麗香さんに分かるんです?」
「あの娘、泣きながら理由を喋ってたけど、涙なんか出てなかったわ」
麗香の言葉に、由香は耳を疑った。
「それに、いくら先生といったって、放送室のような密室…外に音の漏れ難い部屋に男と2人でノコノコ中に入るかしら?」
「じゃあ、彼女は…」
「そういう事。自分から分かって付いて行ったのよ。中2にもなれば、そのくらいの知識はあるでしょ」
「でも、どうして…」
「それは分からない。私は彼女じゃないからね」
理路整然とした麗香の答え。聞いた由香は悲しい顔で俯いた。
信じていた者に裏切られた虚しさがそうさせた。
「でも…」
そう云った麗香の目は鋭く輝いた。
「その先生…田沼は許されないわ。私の知る限り、今年で3件のレイプを学内で起こしてる」
「部長…」
由香の顔がパアッと弾けた。
「必ず、シッポを掴んで学園に居られなくしてやるから…」
その目は、野望に満ちていた。