未完成恋愛シンドローム - 希望的観測 --4
「ちゅっ」
「んむ・・」
また、コタローがキスをしてくる。
「くちゅ・・・るりゅっ」
「んむあ・・は、んっ・・・」
コタローの舌が、口の中を丁寧に、乱暴に動き回る。
「んっ・・・・ん?」
何かがおかしい。
「ちゅぷっ、ぁむ・・・ちゅくっ」
「ふぅ・・っ、んっ・・・くっ」
流れ込んできた唾液を飲み下す。
疑問は更に増した。
―・・・甘い?
「ちゅ・・んー、痛い痛い」
更にキスを続けようとするコタローの顔に手を当て、引き剥がす。
「お前・・・」
正面から睨み付ける。
「気に入らんかった?」
ニヤニヤと笑いながら言うコタロー。
「なに喰うてんねん、あんた」
「アメ」
そう言って、舌を出す。
小指の先ほどの大きさの蒼い球体が、舌先で光っている。
「なんで?」
殴りたくなる衝動を抑えつつ、聞く。
「やってみたかったから」
―ゴッ。
手が出た。
「いったー!」
「アホかお前は!!」
頭をさすりながらの抗議の声に、こっちも声を荒げる。
「しゃーないやん、やってみたかってんから」
さも当然のようにのたまうコタロー。
「テスト勉強してる間に考えることかボケェ!!」
一度解けた堪忍袋の緒はそうそう結べないらしく、自分でもちょっと引く程に声を張り上げる。
「・・・」
「・・なに?」
じっと見てくるコタローの視線に気付き、睨み付けながら聞く。
その表情に、いつものヘラヘラした感じがないことに気付き、怒りが収まってくる。
―言い過ぎた・・?
「ごめんなさい」
「・・・」
いきなり頭を下げられ、頭に登っていた血が一気に冷めた。
「ごめんな、イヴ」
「あ・・・」
そう言いながら、コタローがすり寄ってくる。
・・・・。
すり寄ってくる?
「わっ」
いきなり押し倒された。
「申し訳ないこの気持ちは、身体で払わして貰うわ」
「・・・・・・」
絶句。
と言うかむしろ、少しでもこいつに対して申し訳ない気持ちになった自分の甘さに、怒りすら沸く。
「イーヴー」
「やっ、や・・・」
首筋にキスをしてくるコタロー。
「可愛いなー、イヴは」
―プチン。
「死ねー!!!」
―ドズッ。
「げぐっ」
「あ」
怒りに任せて放った膝蹴りは、ものの見事にコタローの急所に命中した。
ちゃんとした型で蹴った訳ではないから、潰れてはないと思う。多分。