未完成恋愛シンドローム - 希望的観測 --3
「キスさせ」
「嫌」
―まったく・・。
「まだ全部ゆーてへんやん」
言葉の途中で遮ったことに対して、ブーブー不満を言うコタロー。
が、
「言わせてたまるか」
半分以上諦めつつ、冷ややかな目つきでコタローを睨む。
「そもそも、オレにはそこまでしてあんたにプリント解いて貰う義務も義理もない」
「えー?!」
きっぱりと言い放つオレと、何故か驚くコタロー。
「そんな・・あんなに愛し合った仲やのに・・・」
「誰と誰がや!!」
表面上だけでも冷静さを失わないようにしていたのが、完全にムダになった。
というか、その言い種はない。
「えー。ってゆーか、えーやん減るもんじゃなし」
「尊厳が失われる」
―なんか、この頃こんな言い争いばっか・・・。
1ミリたりとも建設性がない。
「イヴのケチー」
―ああもう・・・。
「いつまでもいつまでもグダグダ言うな!!」
でっかい声をあげたオレを、キョトンとした瞳でコタローが見つめてくる。
「・・・・・」
「・・・」
―しゃーない
「・・判ったよ」
「?」
「キスだけやぞ」
そう言った瞬間、満面の笑みを浮かべたコタローに、オレは苦笑いするしかなかった。
「取り敢えず瞳ぇ瞑って?」
「たかがキスで、なんで瞳ぇ瞑らなあかんねん」
なんだかんだでコタローの思惑通りに進められてる気がして、悪態でも吐かなきゃやってられない訳で。
「そんなにオレの顔見ながらキスしたい?」
「・・・」
いい加減にしろと思いながら黙って睨み付ける。
「イヴ怖い」
「瞑ればええねんやろ、瞑れば・・」
渋々瞳を瞑る。
・・・・。
―・・・?
なかなか、キスをしてこない。
瞳を開けようかと思ったけど、そんな時に限って目の前にコタローがいたら気まずいので、そのまま瞑り続ける。
「・・・・」
壁時計の秒針の音が、やたらと耳につく。
と、
「ちゅっ」
「ん・・・」
コタローの口唇が触れてきた。
柔らかい感触。
軽く触れるだけの口づけを、何度も繰り返してくる。
「ちゅむっ」
「ん・・・・!」
口唇を割り開いて、コタローの舌が入ってきた。
「れろっ・・ちゅっ、」
「ふ・・ぅ、ん・・・」
「るろぉっ」
「!!」
歯並びを確かめでもするように動いていた舌が、口唇の裏側に触れ、なぞった瞬間―
「ふっ・・・イヴ?」
オレの変化に気付いたのか、口唇を離すコタロー。
「―・・・っ」
ただ、キスされただけなのに―
「もしかして、イッた?」
「ちがっ!!」
叫んで閉じていた瞳を開けたら、すぐ前にコタローの顔があり、慌てて視線を逸らす。
―確かに、イきそうにはなったけど。あんだけで・・。