エリザベス・悲劇の人形たちU-1
あれから一年…
30体の子供人形たちも、ハーレス邸での生活にすっかり馴染んでいた。
優しいエリザベスママの愛に包まれながら、豊かで楽しい暮らしをしているのだ。
今は歌の時間である。
玩具のピアノを弾くエリザベスママを囲むように、輪になっている子供人形たち。
隣同士、手をつなぐ態勢を取っている。
ピアノの伴奏に合わせて、一斉に腕を前後に振りながら歌うのだ。
歌う曲目は…
『優しいママ』
『素敵なママ』
『私たち、幸せ!』
『毎日を楽しく優雅に』『美味しいご馳走でお腹イッパイ』
『温かいお風呂』
『甘えっ子キディ』
『素敵なママ、おやすみなさい』
更にその場で足踏みしながら『人形行進曲』も歌うのだ。
エリザベスも、子供人形たちも、笑顔笑顔で歌を楽しんでいた。
「ただいまァ」
検査の為、街の病院に行っていたマルセルが帰宅した。
「お邪魔しまーす」
妹のグロリアスも一緒だ。
年齢は姉が45歳で、妹が38歳の7つ違い。
おっとり屋のマルセルとは正反対に、グロリアスはシッカリ者。
悪く言えば、やや性格がキツいって事だろう。
更に…
姉との違いは、超能力が使えるって事だろう。
透視とかヒーリングは出来ないが、物を動かす事は出来るのだ。
人形たちの様子を見入るグロリアス。
氷のような冷たい視線を送っている。
「怠け者、エリザベス」