今夜、七星で Tsubaki's Time <COUNT2>-9
「うっ…椿…」
あたしの前髪を握ってぐしゃぐしゃにしながら、快感に耐える。
あたしは先輩の欲望の主張をくわえながら目を閉じた。
―――これが、ユースケ君なら。
そう思ってしまう自分がいる。
好きな人と寝てるって確信があるか…そんな確信、どこにもない。
先輩はなぜ、あたしの元にやってくるんだろう。
ただ…体を求めて…それだけ?
「椿…いいよ…」
誰に抱かせてるのか…そんなことは聞かないで…お願いだから。
「…イキそうだ…ああ…」
その言葉が合図。
あたしは唇から先輩のそれを放して、グロテスクなそれから目をそらす。
先輩はあたしのベッドのサイドテーブルの上に無造作に置いてあるコンドームを取ると、面倒くさそうに、だけど手早く、それにかぶせた。
あたしの体を押し倒し、準備ができているかなんてことも確認せず、『器』めがけて…貫く。
あたしはただのウツワ…その表現がふさわしい。
恋に幻想を抱いたあたしが馬鹿だった。
久しぶりにとても大好きだった人と出会って。
……大好きだった人…?
あたしはそもそも大学時代も、先輩のことが好きだったんだろうか。
…好きなふりをしてたのかもしれない。
体を求められることが好かれていることなんだと思いたかったのかもしれない。
そんなふりをあたしは今でも続けて。
……あたしの中で、それがこすれて、痛い。
今のあたしはほとんど潤っていないのだから当たり前。
ほとんど愛撫なんかしてくれない。
…だって、濡れて滑りがよくなれば締まりが悪くなるから、って言ってたっけ?
もう、早く終わらせて。
「…い、くっ」
ドクン、と先輩のそれが弾ける。
ああ…終わった…。
先輩は適当にコンドームを処理して。
あたしはゆっくりと、起きあがった。
…勝手に涙が溢れてくる。
何で、こんな思いをしなきゃいけないんだろうか…そんな思いが募って、募って。
「…どうしたの?」
無関心な先輩でも、あたしが泣いているのがさすがに気になったらしく、あたしにそう言った。
でも抱きしめてくれるとか優しい言葉をかけてくれる、なんてことはしない。
「どうしたの」って言葉からわかるのは、面倒くさそうに言った台詞だってこと。