今夜、七星で Tsubaki's Time <COUNT2>-8
「椿、さん」
「ん…?」
「…樹里さんに黙っとくから…また、来てよ」
ユースケ君が汗で濡れた前髪をかきあげながら、体を起こす。
…あたしの目をじっと見つめて離さない。
「言われたくないんでしょ?」
それがただの契約だとわかっていても、求められている気がして何だか嬉しかった。
「…いつならいいのよ」
「え?」
「…いつなら、樹里みたいにユースケ君の夜をキープできるのか、って聞いてるの」
あたしがこんなことを言ってユースケ君は驚いていたけど、自分でも、こんな言葉が出てくることに驚く。
普段は自分の気持ちもきちんと伝えられないはずなのに。
「…今日土曜だし、土曜でどう? 次の土曜、店に来てくれればいいよ」
「…うん、いいよ」
つまりお互い、金曜に別の人とセックスをして…
そして次の日にお互いをむさぼり合うということ。
「樹里さんには言わない。約束するよ」
…本当はそんな約束なんてどうだっていいんだと思う。
あたしはただ、自分の心の隙間を埋め合わせようとしてるだけ―――
ユースケ君の部屋を出るとき、1時を過ぎていた。
「送るよ」と言われたけど、あたしはそれを断って1人で部屋を出た。
冷たい風が、あたしに吹き付ける。まるで、あたしの心の隙間をさらに広げるように。
ふと、顔をあげて最上階である7階を見つめた。
この時間帯だ。電気が点いてる部屋はまばらだった。
ユースケ君の、部屋は…
電気が点いてる7階の、あの部屋だ。まるで7つ目の星…『シチセイ』…バーの名前みたい。
あたしは『7つ目の星』を見上げながら、そんなことを思っていた−−−
・・・・・・・・・
そんなこんなで…また、金曜がやってくる。
もちろん、何食わぬ顔で樹里と七星に行き、あたしは23時に間に合うように家に帰る。
他の男と寝たのに…
一応『彼氏』である町田先輩と会っても、罪悪感どころか感じるのは嫌悪。