今夜、七星で Tsubaki's Time <COUNT2>-3
「お姫様、どうぞこちらへ」
「ばっ、馬鹿!」
あたしはその手をぱんっとはらう。
ユースケ君はそんなあたしを見てクスクスと笑うと、部屋の奥へと進んでいった。
ユースケ君が無造作にジャンパーを脱ぎ捨てると、部屋の中央部にある電気のひもをカチカチと何回か引っ張って、ぱっとあかりをつける。
部屋には、ベースや、あたしの名前の知らない機材が置いてある。
あたしは思わずきょろきょろとあたりを見回してしまった。
「ベース、弾けるの?」
「うん。何もできねー俺の取り柄。…さてと、『お姫様』?」
「きゃっ…」
手を引っ張るから、ハンドバックを思わず落としたあたし。
あたしの体を抱き寄せて。そして唇をふさぐ。
「んっ…」
冷たい唇同士が重なりあう。
キスをしながら手早くあたしのコートを脱がせると、あたしの体をベッドに押し倒した。
「んぅっ…」
キスをやめてくれたときには、お互いの吐息は荒くなってて。
「服…脱がせた方がいい? それとも自分で?」
「自分で…脱ぐ」
そう言うと、ユースケ君があたしの体を起こしてくれる。
あたしはもじもじしながら、自分の白のVネックのセーターに手をかけた。
「脱いで」
甘い声で、あたしを誘うように、せかす。
手が震えて、なかなか脱ぐことができなくて。だけどそんな様子をユースケ君がまじまじと見ている。
脱ぎ終えたときには、ユースケ君の顔が見れなくて。
「…下着、選んでつけてきた?」
そんな的確な推測に、あたしは何も言えない。
薄いピンク色で、可愛くレースのついた下着。一目惚れして買ったんだけど…まさか勝負下着みたいな使い方するなんて思わなかった。
「下も」
催促するユースケ君。今日の朝まで、きっと樹里を抱いてたくせに。
あたしなんか、たくさんいる女の子のうちの1人のくせに。
黒のロングスカートのジッパーをゆっくりとおろす。
ここまで脱いだのに、やっぱりすっごく恥ずかしくて。
あたしが下着と、黒のタイツを身につけただけの姿になると、ユースケ君があたしの体に手を伸ばす。
「ほんと…着やせするんだ」
「え……あっ」
手首を掴んで、またベッドにあたしの体を沈めた。
乱暴にあたしの胸を掴みながら、顔を埋める。
「ユースケ君っ…」
「椿さんの体って…実は樹里さんよりスタイルいいかも」
「何言ってっ…やっ…ん」
舌の感触を胸に感じて、この緊張が、心臓の音がユースケ君に伝わらないかって。
肌にひんやりとした空気と、冷たい唇が触れるけど、唇があたるたびにそこが熱を持ってく気がする。