今夜、七星で Tsubaki's Time <COUNT2>-2
「メール送ってすぐ…夜中なのに樹里からすぐメール返ってきたけど、一緒だったんですか?」
「うん。あと…年上なんだから、敬語使わなくていいですよ。――俺も中途半端な敬語やめる。何か、気ぃ遣うのだめだわ」
髪をくしゃくしゃっとかきあげて、照れた表情を見せる。
…そんな顔もするんだ。
「樹里は…何か言ってた?」
「連絡先聞いてきたことに対して? …何も言わなかったよ」
その返事に、あたしはホッとする。
…あたし、やっぱり緊張してる。
そういうことをするわけだから、下着だってお気に入りをつけてきてしまったし。
何だか…馬鹿みたい。
町田さんにあんなことを吐き捨てられて…ヤケになってるなんて。
歩きながら、こつん、と自分の手がユースケ君の手に当たった。
「あ、ごめん…」
思わず、顔を上げて謝る。ただ、手が当たっただけなのに、顔が熱くなる。
「緊張してんだ?」
へへっと笑うユースケ君の顔はまるで少年のよう。
お店ではそんな顔しないくせに。
「するよ…そりゃ」
そう言ったら、触れた手をぎゅっとユースケ君に握られる。あったかくて、おっきな手。
そうやってさりげなく、誰かをあっためて安心させるんだ。
樹里にだって…きっとそう。
気を遣うのが苦手だって言ったけど、この人は多分すっごく気を遣う人で。
でなければ…樹里がユースケ君と寝るはずないもん。
「…着いたよ。ここの、7階。っつーか一番上」
ユースケ君が指さして言う。
そして、あたしの手を引っ張ってマンションの中へ。
エレベーターに乗り込んでもユースケ君は手を放さない。
7階にエレベーターが到着すると、あたしの緊張が最大限まで到達する。
心臓の音がうるさくて。こけてしまいそうになるくらい、足元がふらふらして。
とある部屋の前でユースケ君の足が止まる。面倒くさそうに書かれた表札には、もちろんユースケ君の名字である『加瀬』の字。
玄関に入り、あたしがブーツを脱ぐために、ユースケ君はやっと手を放す。
茶色のショートブーツを脱ぎ終えると、またユースケ君が手を差し出した。