今夜、七星で Yuusuke’s Time <COUNT2>-3
「お待たせして……」
仕事帰りではない服装。緊張した面持ちで頭を下げる。
生真面目というか、脅されている認識が薄いのか。ホント甘い女。
「まさかこんなに早く決めてくれると思わなかった」
薄く笑って歩みを促す。
駅から徒歩5分。
ふざけた話を織り交ぜながら軽く手を繋ぐ。
案外ガードの薄い女、か?
手を繋ぐ、その行為に頬を赤らめていた。
「…着いたよ。ここの、7階。っつーか、一番上」
白い外壁のこぢんまりとしたマンション。7階建ての最上階、ひと部屋だけに削られたそこは、バルコニーもついた俺の城だ。
「こっち」
ぐいっと繋いだ手を引っ張ってエレベーターへと乗り込む。
深夜23時、静まり返ったマンションにモーター音が響く。
頭一つ低い椿サンの顔に目をやると、熟れたトマトみたいに真っ赤に緊張している。
手を引っ張って部屋に上げると、ブーツを脱ぐ手がもたついていた。
「お姫様、どうぞこちらへ」
「ばっ、馬鹿!」
かじかんだ真っ赤な手でブーツを脱ぐ椿サンに手を差し延べる。
パチンと叩き返されて笑ってしまう。
ホント、面白い女だ。
「ベース、弾けるの?」
キョロキョロと辺りを見回す椿サンは、何台か立て掛けてあるベースに目を止めた。
「何もできねー俺の取り柄」
雑多に置かれたベース、アンプ、シンセ等、様々な機材を物珍しそうに眺めるが、その視線を奪うように手を引っ張った。
「…さてと、『お姫様』?」
「きゃっ…」
柔らかそうな唇を塞ぐ。
思った以上に弾力のある唇。食べるように唇を重ね、掴まれた手から痛みを感じるほど執拗に繰り返す。
舌を侵入させれば絡み付き、咥内のあらゆる箇所を刺激して声も唾液も貪ってゆく。
バックが足元に落ちた音がした。
やめてっ、唇の隙間から声が漏れた気もする。
抱き寄せて、痛いくらい暴力的なキスをして、捩込ませた舌で全てを奪う。
こんなにも夢中になる。
新しい玩具に俺はキスを繰り返した。