今夜、七星で Yuusuke’s Time <COUNT2>-11
ずんずんと下から突き上げるように体を揺すり、こんな状態でも諦めたように俺達は達した。体を震わせて達するタイミングに合わせて、俺も精液をスキンの中に放出させた。
何回も繋がった証明みたいな癖。
いっただけじゃない、意志をもって流れた涙。静かに、樹里さんが泣いていた。
指の間から涙がほろりと零れた後、こめかみを通り消えていった。
小さい声で嗚咽をこぼす樹里さん。
俺は動きを止め、沈んでしまった気持ちに比例するように萎えたモノを引きずり出す。
俺は淋しさを埋められただろうか。
樹里さんの奥に潜んだ闇を、少しでも照らせただろうか。
恋人、じやなく、セフレとして。
もう樹里さんとも終わりだな、そんな焦燥感に泣きたくなった。
玄関でただ交わるだけの行為を終えた俺達は、無言のまま交互にシャワーを浴びてリビングで寛いでいた。
弱くかけた暖房に心地よい睡魔が訪れる。何も話さないから穏やかなだけで、テーブルに置かれた缶ビールの下には、目を背けたくなるような樹里さんと俺の壁が敷かれていた。
「もう潮時、なんて思っているでしょ」
対面に座る樹里さんが俺を見透かしてくる。
濡れた髪をかき上げる仕草や、化粧を落とした素顔に疲れの色が影を落としていた。
「……樹里さんには敵わないね」
缶ビールに手を伸ばし、くいっと一口飲んだ後、水滴の輪を描いた万札を樹里さんの方へ押しやった。
「もう貰えない。ごめん」
「いつもタク代だって言っているでしょ?気にしないでって」
万札二枚、くっきり輪の描かれた福沢諭吉。いつもはポケットに突っ込んでキスでも交わして帰るのに。
¨最後¨
そんな言葉が俺達の間をさ迷う。
「……ごめん」
頭を下げ、爪を噛む。
言いようの無い虚無感が広がる。
樹里さんは俺を見ていなかった。俺の存在は必要なかった。
金を貰って、時々寝て、楽しんで、そういったずっと続くであろうセフレ。
別れはまだ遠い未来だと思っていたのに。
「……ははは。謝るのはあたしの方なのにね」
髪をがしがしと擦り、渇いた笑いが聞こえた。
「ごめんね、ユースケ。ごめんね、本当……ごめ……」
言葉が繋がらず、涙に変わる。そんな様子を俺は俯いたまま受け入れた。
静かに涙を流す樹里さんを見てはいけない気がした。
「またお店に来て、いつも通り楽しもう。毎週金曜は飲み会にして、二人で馬鹿みたいに飲んでさ」
わざと明るく振る舞って、必死に笑った。
樹里さんは俺と別れるから泣いているわけじゃ無い。
……好きでも無い俺と、寝たから。自分の気持ちに嘘を付けなくて悲しんでいるんだ……