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魔性の仔
【その他 官能小説】

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魔性の仔@-3

 一方、刈谷が少女と出会った場所からさらに奥にある小さな山村。周り壁のような山に囲まれた平地には、今だカヤ葺の民家が肩を寄せ合うように十数軒がかたまり、そのような集落が田畑の間にいくつかみえる。
 その山村から少し離れた場所にある川沿いの小さな水車小屋。普段は、村で穫れた農作物である米や麦、蕎麦の実を、精する場所。
 そこに、かなりの老人──村の重鎮だろう─が、5人が顔を突き合わせていた。

「昨夜の探索で見つからなんだ…今後はどうすべきか、皆で話合って…」

 囲炉裏の火が燻り、小さな煙が天井の明かり取りから外へと流れる。
 その周りを囲む老人達のひとり々が、同じように苦悩のシワを顔に刻んでいた。

「若い衆の話では、山道の辺りで忽然と匂いが消えていたそうじゃが…」
「だとすると、誰かに拾われて街に降りたのか…」
「そもそも、何故、あやつは小屋から逃げ出せたのじゃ?」
「夜の当番役がうっかり居眠りをしたそうだ」

 それを聞いた途端、老人のひとりが渋い顔をした。

「あれは天野の若い衆じゃな…まったく…」

 険のある言葉。それを聞いた別の老人が血相を変えた。

「それは、奥乃院の若い衆が足らんからウチの者が無理しとるんだろうが!そんなことも考えずに都合の良い事ばかりぬかすな!」
「若い者が居ないのはどこも同じじゃッ!自らの失敗を人のせいにするとは、見苦しいぞ!」

 ──天野、奥乃院…ひとつの村の中を区分けする組合のようなモノ─

 そこから2人の罵り合いが始まった。互いに昨夜の失態に対する責任のなすり合いは、端から見ても醜いモノだった。
 と、その時、老人の中でもさらに高齢な──長らしき男─老人が板張りの床を強く叩いた。

 周りの老人の声が止み、一斉に、その老人へ皆の顔が集まった。
 長老らしき男は、厳しい顔で皆に迫る。

「終わった事を罵り合うても、何も変わらぬぞッ!そんなことより、いかにあの娘を見つけだすかを考えるのじゃ」

 各々が、厳しい顔を浮かべた。小屋の中で小枝の燃える音だけが広がる。

「捜す範囲をさらに広げよ」

 先ほどの長が云い放つ。

「しかし、若い衆は目立ちまする。結果、ここの存在が他所に知れ渡れば大変なこととなります」

 中のひとりが抗いの言葉を吐いた。が、長である老人は高笑いをみせた後、一喝した。

「若い衆が目立つ位、どれほどのものじゃッ!…我らの目的は、あの娘を取り戻す事にあろう」

 恫喝するような鋭い目で周りを威圧する。

「それに、あの娘自身、分かっとるはずじゃ──自分は、この村以外で生きていけぬ─と…」

 結局、長の言葉に他の4人も同意して話合いは終わった。彼らは、各々の部落に帰って皆に決まったことを伝えた。


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