投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 304 やっぱすっきゃねん! 306 やっぱすっきゃねん!の最後へ

やっぱすっきゃねん!VG-1

 ──やはりな。

 1塁側観客席に座る一哉は、東海中のベンチを見て納得の笑みを浮かべた。
 しかし、永井や葛城、それに選手達の表情は違った。──何故に?という唖然とした顔。

「葛城さん…練習を見ててもらえますか」

 永井はそう伝えると、試合準備が進むグランドを横切り3塁ベンチへ向かった。

「榊さん!」

 懐かしい声に呼び掛けられ、榊は表情を緩ませた。

「おお、永井君!久しぶりだなあ」
「な、何で東海中の監督なんです?確か春先まで竹野さんだったはずじゃ…」

 永井は、驚きから挨拶も忘れて疑問をぶつける。

「その竹野君が急に異動になってね。校長に頼み込まれたんだよ」
「そうだったんですか…」

 ようやく事の次第を知った永井の顔に冷静さが戻る。榊は1塁ベンチの選手達を懐かしそうな顔で見つめた。

「あれから1年か…皆、ひと回り大きくなったな。それも、ただ大きいだけじゃない。──鍛えられた─そんな強さも感じる」
「榊さんのおかげですよ」
「私の…?」

 榊には、永井の言葉の意味が分からない。

「私に藤野さんを紹介してくれたじゃないですか。彼の野球に対する深い知識や経験は、選手だけでなく、私や葛城さんに良い刺激を与えてくれました」

 語り掛ける永井の顔はハツラツとしていた。そんな様子に榊は目を細める。

「それは良かった。私はまだ監督について3ヶ月。やっとレギュラー・クラスが掌握できた程度だ。まあ、今日はお手柔らかに頼むよ」

 謙遜と社交辞令。普通なら──大人の会話─で返すものだが永井は違った。

「すいませんが、榊さん。それはムリです」

 榊の表情から笑みが消えた。

「私達、青葉中のスローガンは──全国制覇─です。地区の、ましてや1回戦でもたつくわけにはいきません」

 永井の挑戦的な言葉。榊は不敵な笑みを浮かべた。

「そうだったな…ならば、ウチのチームも全力で当たらせてもらうよ」

 永井は、帽子をとって一礼すると1塁ベンチへと戻って行った。

「アッ!戻って来た」

 近づく永井を、選手達は練習そっちのけで集まり囲んだ。皆、榊の存在が気になるのだ。

「監督ッ!何で監督…榊先生が東海中のベンチに居るんですか?」

 ざわつく選手達を制し、永井は先ほど聞いた経緯を説明する。
 すると、表情を曇らせる選手が現れた。永井は思った。──このまま試合を臨むのはマズいと。
 彼は急きょ、選手を整列させミーティングに切り替えた。


やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 304 やっぱすっきゃねん! 306 やっぱすっきゃねん!の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前