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やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

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やっぱすっきゃねん!VG-2

「皆の中では、榊さんが相手チームの監督だとやり難いと思っている者も居るだろう…」

 永井は目に力を込め、選手ひとり々を見据えた。

「しかし、その榊さんに育てて頂いたからこそ、全力で試合に挑むのがおまえ達の成すべきことだ。
 おまえ達は昨年の大会後からの厳しい練習にも耐え、練習試合でも成果を出してきた。
 おまえ達の目標は──全国制覇─だ。こんな場所で終わるわけにはいかん。
 オレは、おまえ達が東海中を圧倒すると信じている!」

 永井の言葉に応え、怒声のような掛け声を選手全員が挙げた。
 永井は再び選手ひとり々の目を見る。──戦う目─に変わっていた。

 試合開始3分前。
 両ベンチの選手が円陣を組む。

「みんな、奴らとの練習試合を思い出せ。無様に負けた試合を」

 キャプテン達也の声に、皆は聞き入る。

「今日は逆だ!倍返しで奴らを無様にしてやるぞッ!」

 ──オオウッ!─という掛け声と共に円陣は解かれ、選手達がベンチ前にズラリと並んだ。

 審判4人がホームに集まった。
「集合!」

 主審の右手が上がった。

「行くぞォーーッ!」

 両チームの選手がホームへ駆けていく。ベースを挟んで相対する目は相手を睨みつける。
 試合はすでに始まっていた。

「只今より、青葉中対東海中の試合を行う。互いに礼!」

 帽子を取り、礼を交わす両チーム。球場全体から爽やかな拍手が送られた。

 ベンチに戻り、先頭バッター乾と2番足立が打席の準備に掛かる。リストバンドをしたまま手袋のベルトを強く締めつけ固定する。──重い球を投げる相手ピッチャーへの対策。

 葛城が手を叩いて注目を集める。

「みんな、いい。最初は低めを捨てるのよ!」

 一哉が練習試合で集めた対東海中対策。一昨日のミーティングで語られたことを、今一度確認させた。

 乾は、ネクストサークルで片ひざを着いて、ピッチャーの投球練習を凝視する。
 グラブをベルトの位置で構え、両足を肩幅よりかなり広くとるセットポジション。
 左足を速い動きでステップし、右腕を後方で深く曲げてタメをつくると、一気に前で振り抜く。
 ──バチィンッ!─という音とともに、キャッチャーミットは大きく揺れた。

 ──春先よりスピードも球威も増してるな。

 乾は投球動作に合わせてタイミングを測った。

「ラスト!」

 ピッチャーの指が球を挟む。低めに投げられたボールは急激に落下し、キャッチャーの前でバウンドした。

 ──あのコースは捨て、だな。

 乾はネクストサークルを立ち、素振りを数回繰り返して左打席に入った。まっさらで白線も鮮やかな打席の地面を掻いて窪みを作る。
 出来た窪みに左足を入れて固定して構えた。左ひじを張り、相手ピッチャーの球威に負けないように。

 主審が右手を前に突き出す。


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