密心〜かみのみそか〜-4
「みそか……とろとろやな……びしょびしょやで」
「ゃあ！…言っちゃ、や！恥ずか、しぃ…ぁああぁあぁ！！…はっ、ん！」
穿たれた瞬間、チカチカ光った頭の中は闇に飲まれた
……まばゆい光の先に進むように
「……か、みそか！」
「……は、…ぇ？」
「よかった……気ィ失おてたんやで」
「あ……、すいんせんでした」
思わず返せば頭を指ではじかれた
「廓詞…もうやめや。みそかは俺の嫁になるんやから」
「……はい。蔵ノ介さま」
嬉しくて緩んだ頬を締める間もなく、反射で頷いていた
花街をでて、まさか嫁になど迎えられるとは……思いもしなかった
「みそかとはこれから毎日朝寝できんるんやな」
くすくす笑いながら閨の中で戯れる
「はい…いえ、でも毎日は、…あ、じゃあ、たまになら…朝寝坊しちゃいましょうね」
閨で共に一つの布団にくるまりながら、まるで内緒話をするようにくすくすと笑いあった
体には桜が舞い散ったように、蔵ノ介さまの印がたくさん残っていた
愛された、証――
これからは他の客を気にすることなく証を残しても許されるのだ
一日も早く、と…もう話は裏でついていたようで花道道中を用意されることもなく密やかに蜜花世の店前で身請けされた
密やかといえどたくさんの姐さんに見送られて……私は幸せ者だ
「達者で暮らしなされんせ、みそか」
「よい方に迎えられんしたな」
「みそか、ようございんしたね」
かけられる言葉に、花街と違い外にでるために施した薄化粧も落ちそうなほど嬉しく涙とまらない
「みそか…」
かけられる、違いようのない慕う方の声に顔をあげればやはり……牡丹姐さんがいらっしゃった
「牡丹花魁……」
あぁ…涙が溢れてとまらない
とまらないの
「いつでもあちきに会い来てくださいんせ。旦那に連れてこられればよぅございんしょう」
「牡丹姐さん…」
最後までこんな私の心配をしてくださるのがありがたくて、頭を垂れると頭ごと抱き込まれ、気づけば私は姐さんの胸に包まれていた