やっぱすっきゃねん!VF-2
「有理ちゃんはさ、この雰囲気どう思う?」
そっと耳打ちする佳代。そんな彼女に有理も呟きかけた。
「確かに異常だけど、私には悪あがきにしか見えないな」
「悪あがき…?」
「今さらやっても所詮、無駄って意味よ」
有理の強い口調に、佳代はたじろいだ。
「有理ちゃん。なんだか怖いね」
「そんなつもりじゃ…ただ、本気なら佳代ちゃんみたいに、もっと前からやるべきでしょう?」
「ま、まあ、そうだけど…」
正論を吐く有理に、佳代は何も言えなくなった。
──自分とて、それほど立派な動機付けがあるわけでない。
──明確とした目標か。
張り詰めた空気の中、佳代はひとり、ため息を吐いていた。
ホームルームが終わると、期末テストが始まった。
今日と明日で3教科づつの日程。佳代の苦手な数学、理科は初日だ。
──このためにやったんだ…。
未明まで勉強してきた彼女は、後は成るように成れという心境で挑む。
1時限目は数学。
用紙には、2次関数グラフから求める確率や交差する図の証明など、複雑な数式も含めた記述問題が並んでいた。
テストが始まると、難しい顔をしながらもペンを走らせる佳代。
昨年の今頃は簡単な方程式すらお手上げだったのが、解るようになるには、本人の努力もさることながら有理の存在が大きかった。
1時限目が終わり、テスト用紙が集められると佳代は再び有理の席に寄った。
「…どうだった?テスト」
──聞いてもらいたかった。
「まあまあかな。佳代ちゃんは?」
「私は…」
頬を染める佳代。
「私さ。初めて全部の問題に答えが書けた」
「よかったねッ!」
有理は一転、破顔させて佳代の手を両手で包み込む。
「これで、心置きなく大会に臨めるね!」
慈愛に満ちた有理の表情に、佳代は胸が熱くなった。
「必ず全国に行くからさ。その時は応援よろしくね」
「もちろん!」
お互いが温かな表情で視線を交していた。