偽り-1
「…ああッ!…あ、うんッ!…」
ベッドの上。女は喘えぎ悶えていた。男もグラインドの中、呻き音を漏らす。
「あッ!あッ!…いきそう…」
「オ…オレも…そろそろ…」
濡れそぼった女の柔らかい花弁を、男の硬く反ったペ〇スが突きあげる。
激しい絡み合いにシーツは捲れて乱れる。獣と化した男女の息遣いと、粘液を掻く音だけが辺りを支配していた。
「あ、あああッ!…はあッ!…」
女は叫びにも似た悦びの声とともに昇天した。膣肉は収縮を繰り返してペ〇スに絡み付く。
──男そのものを呑み込もうとするように─
「ぐッ!…が、ああッ!…」
遅れて男も果てた。女の腹の上に、大量の白濁液を吐き出す。
「…広親の…熱い…」
女は余韻に浸りながら、指の先で白濁液をもて遊ぶ。
「終わったら帰ってくれるか?」
男はタバコに火を点けるとベッドから降りた。部屋のそこかしこに散らばった服──愛欲の残骸─を拾い集める。
「…ちょっと。どういう意味?」
「知り合いが訪ねて来るんだ。おまえが居ると話も出来ない」
女の眉間にシワが寄り、顔が強張った。
「それって、他の女なの?」
「違うよ。昔からの…それこそ産まれた時からの…」
男は服を着ると、集めた女の服をベッドに投げ置いた。
「さあ、分かったら出ていってくれ」
「言われなくたって出て行くわよ!」
女は服を身に付けると、ヒステリックな声──2度と来るもんかッ!─を挙げて荒々しくドアを閉めた。
──まったく…。あの女とも潮時かな。
男はアパートの窓辺に立つと、外の夜景に目をうつしてタバコの煙を深く吸い込んだ。
ドアを叩く音がした。
──あいつ、また忘れ物か?
女は時折、わざと忘れ物をする──嫉妬深い─そんな癖があった。
男はタバコを灰皿でもみ消し、躊躇い無くドアを開けた。
──…!
男は意外という顔で相手を見た。その双眸には憎しみが宿っていた。
「な…何故…?」
男の視線が自身を見つめた。胸には刃物が深く刺さっている。
──……。
遠のく意識の中で男は呟いた。が、その声は小さく、誰にも聞かれることは無かった。
やがて男はゆっくりと跪き、そして床に倒れた。