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コンビニ草紙
【理想の恋愛 恋愛小説】

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コンビニ草紙-2

慌てて自分の持っている雑誌に目を走らせる。
しばらく恋愛をしてない独身女性なんていざ知らない異性に想像もしていなかった形で会うと、馬鹿みたいに緊張してしまう事がよくわかった。
もしかして、この人も私の事が気になったりするのかな。
なんて自意識過剰に思ったり。
だが、考えるとメガネでスッピン、部屋着のスウェットの女に恋する男はこの世界に何%いるのだろうか。
おそらく10%満たないのではないか。
よく考えたらこの男はこの雑誌を見たがっているのではないかという結論に達した。
今の私はその男がどうゆう人物なのかという事が気になって、読んでいないに等しいから、雑誌を渡そうか迷った。

さっきは話す事さえ出来なかったし、雑誌を棚に返したら失礼になるのではと考え、意を決して話しかけてみる事にした。

「この雑誌、読み終わりましたから。」

すると男は一瞬驚いていたが、軽く頭を下げて猫の様に笑った。
実際、猫が笑った所なんて見た事はないけど、きっとこんな感じに、憎らしくも人を惹き付けるような笑い方をするんじゃないかと思う。

雑誌を渡すと、男は熱心に読み始めた。
手持ちぶさたの私がいつまでもその場にいるのはおかしく感じたので、適当にビールとおつまみを買ってそそくさと部屋に戻った。


ビールを飲みながら明け方近くまでテレビを流して見ていたが、ずっとコンビニであったあの青年の顔が頭から離れなかった。
このマンションに越してから2年程経つが、あんな人と会った事は一度もなかった。
もしかしたら、心の奥底で渦巻いている結婚願望が知らない間に膨らんで幻を見せたとか。

そこまで頭はおかしくなっていないと思いたいが、あの男の恰好や整った横顔を思い出すと、自分の作り出した幻想だったのではと真剣に考えた。


「まさかね」


小さな声でぼやいてみる。

もしまた会えたなら幻想かどうかわかるのではないかと、酔って回らない頭で考えながら明け方私は眠りについた。


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