希望の愛-8
「もしもし?」
「希望君?遥だけど」
「あ、遥。どうした?」
「あの、明日会える?直接言おうとしたら恥ずかしくって……」
明日は部活もなく1日ごろごろしてる予定だった。
「うん、会えるよ」
「よかったー。じゃ1時に駅でいい?」
「オッケー。じゃ明日ね」
電話を切って気付くともう家に着いていた。
「やあ、渡辺君」
「あ、小野さん。こんにちは。お出かけですか?」
「大学に用があって。あ、小嶋さんから伝言で、今日はご飯いいそうだ」
「わかりました。いってらっしゃい」
小野さんがドアを開ける。「あ、理由とか言ってました?」
「いや?言ってなかったけと。……あ、デートかも」「デート!?」
思わず大きな声を上げてしまった。
「かも、ってどういうことですか!?」
「ちょ、落ち着きなよ」
小野さんが呆れたように僕を制する。
「はっきりとはしてないけで、かっこいい男の人が迎えにきてたからさ」
「あ………そうですか………」
僕は放心状態で答えた。
「なんだい、7歳も離れてて」
小野さんは笑って言った。「いいじゃないですか!」僕はむきになる。
「別にだめなんて言ってないよ。僕は応援してるよ」「え………?」
「そんな毎晩都合よく2人きりになれるわけないだろ?」
―………あ―
「ひたむきに頑張ってるやつを邪魔する理由がどこにあるんだい?」
「小野さん………!」
米沢先輩といい僕はなんて先輩に恵まれているんだろうか。
「じゃ、そろそろ行くね」「いってらっしゃいませ!」
小嶋さんに彼氏がいるかもしれないというのに僕は不思議と元気がでた。
今回は急だったので1人で夕食をとったが、それほど寂しくはなかった。小野さんや先輩がついてると考えただけで不思議寂しさには打ち勝った。
がちゃっ、という音がした。洗い物をしていた僕は首だけ向けた。
「あ、大丈夫だったー?小野さんに聞いたー?」
「あぁ、聞いたよ。デートだって?」
「違うわよー」
小嶋さんは笑って言った。嘘をついてるような感じてはなかった。いや、年の功かもしれないから疑いは晴れない。
「イケメンと会ってたそうじゃないか」
「え?あー、小野さんに聞いたのねー?そんなんじゃないわよー」
「じゃなんだよ!?」
「んー?秘密よ」
小嶋さんはだんだん熱くなる僕とは違い終始冷静だった。
「あ、邪魔しちゃったみたいねー。私は部屋に帰るわねー。おやすみなさい」
僕は何も言えなかった。―あの男と会ったのは認めてデートじゃないってどういうことだよ―自分でも惨めになるような怒りを感じながら寝た。
「おう、お待たせ」
「待ってないわ。行きましょ」
「駅に来いってどこ行くんだ?」
「ま、着いてきて」
そう言って僕たちは電車に乗った。電車の中では無言だった。宮崎はなんだか緊張している感じだった。
「ここよ」
しばらくして宮崎が言った。だいぶ駅を通り過ぎたと思う。
「どこ?」
「ま、来てよ」
そう言うと宮崎は僕の前を歩いた。