希望の愛-7
「あのさ………」
「ん?」
「遥って………呼んでくれない?」
「遥?」
「うん、下の名前で呼んでほしいの」
今まで下の名前を知らなかった相手に対してそう呼ぶのは気がひけたが頼まれたので言うとおりにした。
それっきりまた会話は途絶えた。
何事もなく完食し、代金も支払い―きちんと割り勘で―店をあとにした。
宮崎の家は僕と方向が同じようで一緒に帰った。
「なんかごめんね、私のわがままに付き合わせちゃって」
「いい経験になったし。よかったよ、み……遥」
遥は慣れない。いい経験になったというのは嘘ではなかった。小嶋さんと行くにはああいった背伸びした店でなくてはならないと思ったから。
「よかった」
宮崎は笑いながらほっとしたように答えた。なんだか幼く見えた。
「しかし、なんであんな店知ってるんだ?」
宮崎の顔は曇った。
「前に行ったことがあって、また行きたいなぁ、って思ってたの」
「そっか」
「あ、あたしこっちだから」
「うん、また」
「あのさ………また2人で会える?」
「おれでかまわなければいいよ」
ドアを開け、リビングを通り抜け部屋に入った。隣から人の気配はしない。
また夜はなかなか寝付けなかった。
―なんで宮崎は……?― 僕はそんなに鈍感でもなかったので、宮崎がただの友達として近づいてきたとは思わなかった。でも好きな人を相手にしてる様子でもなかった。
結局小嶋さんは僕が起きてるうちは帰ってこなかったようだ。
「あらー、今日は朝練ないのねー」
「おはよ」
「一緒に学校行くー?」
「いいよ、別に」
僕は思わず強い口調で言ってしまった。
「あら………そー」
小嶋さんは悲しそうな声で言った。
「あ、いや、急いでてね。小嶋さんと行ったら遅れるから」
「歩くの遅くて悪かったわねー」
小嶋さんの言葉を背に受け僕は家をでた。
その夜はまた小嶋さんと2人で夕食を食べた。
「昨日は何してたの?」
「んー?友達と会ってたのよー。友達も就職仕立てでバタバタしてて、やっと昨日会えたのよー。」
「そっか」
―そりゃそうだな。出掛けるのと男は同じじゃないよな―
「希望君は?」
「普通に部活行って……飯食いに行ったな」
「あらー、いいわねー。彼女さんと?」
僕は飲んでたお茶を吹き出しそうになった。
「ち、ちがうよ!」
「なによー、慌てちゃってー」
「そっちこそ友達とか言って彼氏じゃねぇのかよ」
「違いますよーだ」
食べおわり、小嶋さんに洗い物は任せ部屋に帰った。宮崎も可愛いがやはり小嶋さんが好きだと思った。
宮崎と飯に行って明日で1週間が経つ。部活が終わり家に向かっていると携帯がなった。宮崎からだ。