想いのいきつく果て〜Final〜-6
「しのくん…パパになるんだよ?あの人のお腹にしのくんの赤ちゃんいるんだって…」
「は?…」
赤ちゃん?
パパ?
驚きを隠せないしのに向かって話し続けた。
「…あの人から電話あった。妊娠してるって言ってた。しのくん子供好きじゃん…ちゃんとパパにならなきゃね…」
紘子はまるで他人事のように言葉を重ねていく。
そうでもしなきゃ苦しさでおかしくなる。とうに限界越えてるから…
「…………」
言葉が出なかった。
『24』と別れた時の違和感がやっと分かったような気がした。
「だから…私たち別れなきゃ駄目なの…しのくん…さよなら…」
『さよなら』
たった4文字の言葉が重く心にのしかかる。
ズキンと心臓が抉られるような感覚…
やっと会えた紘子がいとも簡単に自分の腕からすり抜け離れていく。
今にも押し潰されそうな気持ちに身動き出来ない心は悲鳴をあげそうになった。
ーーーでも
絶対諦められへん。
いや言うても離さへんって言うたやろ。
「紘子!」
肩を掴み振り返らせ、間近に顔を引き寄せる。
それでも俺から視線を逸らす紘子……
「ひろ…ちゃんと俺を見て」
「嫌…」
「ひろ…」
「別に怒ってるんじゃないの…だってしのくんのせいじゃないし……」
俯いたまま淡々と言葉を連ねていく紘子があまりに不憫で思わず強く抱き締めた。
「…お願いだから…これ以上…優しくしないでよ…別れるって…決めたん…だから…」
微かに肩を震わせながら消え入りそうな声で呟く。
しのの抱き締める腕に力が入る。
「……ひろ……辛かったやろ?…ごめんな……」
紘子がどんな想いで『24』の言葉を受けとめたのか。
どんな想いで俺との別れを決断したのか。
その小さな身体で全部一人で背負いこんで、身も心もボロボロにして…
そんなことも知らずにお前のこと支えてやれなくて
本気で泣きたくなった。