想いのいきつく果て〜Final〜-5
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紘子の家に着いたものの、今の状況が分からないままインターホンを鳴らすことは出来ない。
かといってどうすることも出来ない自分が情けなく、イライラだけが募っていく。
「ーーーくそっ」
思わず口に出したその時、玄関の扉が開いた。
中から出てきたのは紛れもなく紘子だった。
「……ひ…ろ?…」
2ヶ月前とはまるで別人のようにやつれた紘子を目の前にして近寄ることが出来なかった。
紘子の視線が自分の方に向けられたにもかかわらず、すぐに逸らされた。
「ひろ?…何で……」
そして俺の横を素通りしていく。
「紘子!!」
咄嗟に紘子の腕を掴み引き寄せた。押さえ込んでいた感情が溢れだし抱き締めずにはいられなかった。
「…………」
紘子は無言のまま目を閉じる。呼吸まで忘れてしまったかのように俺の胸の中で固まっている。
腕を緩めると、真っ青な顔をした焦点の定まらない目をした紘子がいた。
「ひろ?何があったん?」
しのの長い指が紘子の髪を優しく撫でる。
「……………」
「…ひろ…何があったか知らんけど…2ヶ月前、俺が言った事覚えとる?」
微かに紘子の首がコクリと頷いた。
「俺な、ちゃんと就職したんやで。家も借りたし、って当たり前か」
しのは紘子を明るくしようと笑顔で話し続けた。
「ひろ…俺な…」
「しのくん!」
久しぶりに呼ばれた名前に嬉しさが込み上げてくる。紘子の頬に手を伸ばそうとした時紘子の身体が離れていく。
「しのくん…別れよう。ちゃんと言わなきゃ駄目なのに言えなくて…」
「ひろ?…何言って…」
まだ腕には紘子の温もりが僅かに残っているのに、その温かさも一瞬にして冷めていく。
身体中に突き刺さるような痛みが浸透していく…
心も身体も一気に打ち砕かれた。
しのくんと呼んだその愛しい声で何で別れ切りだすんや?
冗談もええ加減にせえよ?
声に出せずに心の中で叫んだ。