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密心
【ファンタジー 官能小説】

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密心〜しののいの〜-1

どうしてか、あの子は自分から辛い道ばかり歩んでしまうような子で……だからか目が離せなく、接するそれにはどこか懐古を含んでいた

昔自分を姉と慕った幼子のような花街に似つかわしくない清んだ目をしていたから世話ばかり焼いてしまった

密やかなれどいつか立派に花咲きなされ

そう願いをこめて花名を送った子


こまごまと働くためにいつも皹(あかぎれ)の絶えないみそかの手はどこか懐かしく、死んだ母を思う

芸の身につかない子だったせいでどこか自分に自信のない、なのに妙に優しい気分になるような……つい弄り倒したくなるような不思議な子だった


姉のようで、母のような気持ちで接していた


だからこそ……みそかには幸せになってほしかった


蔵ノ介なら大丈夫だと思う反面……さみしくてたまらない自分だっている


娘のように妹のように秘めて大切に育ててきた子だから

幸せになってほしくて――
それなのに、ただ素直に祝えない……いつまでも自分の側にいてほしいと思う自分がいないなんて言えば……嘘になろう

「どうしようかねぃ」

すっかり婀娜めいた自身の声をどこか他人のように感じながら、思った


「何がでありんすか?牡丹姐さん」

この子は知らない

例の糞爺……いや三好屋の横暴を知って以来、蔵ノ介は女将に裏で話をつけ、みそかを自分だけの花にした

もうみそかは蔵ノ介以外の客をとることなどないだろう

事実もはや、みそかは蔵ノ介だけの花なのだ


あとはみそかが自ら手折られるばかりで



――羨ましくないと言えば嘘になる

『恋しい私だけのただひとりの男が欲しい』
『恋しい男だけの身でありたい』

誰知らぬ客なれば、杭を心なくとも受け入れ、一夜に戯れなければならない……遊女には許されぬはずの夢はあちきにだって、未だに……未練がましくあるのだから

遊廓に生きる女であってもいつか来ぬ恋には夢みていたい

遊女の身では難しいけれど

みそかのように、淡く、けれど熱く身を焦がすような……優しい請われる思いを向けられたい


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