僕らの関係 最終話 いつも隣に……。-1
年の瀬が近づくと、教室は急かされるように色気づく。
学園祭の頃からその兆候はあったが、クリスマス、初詣とイベントに事欠くことのない時期が、出来立てほやほやのカップルを後押ししていた。
「ねぇねぇユカリン。今年はどうする? 里奈、ケーキ作ろうか?」
「おいおい、また予算オーバーとかするなよ? 今年こそチキン食うんだから」
「ケーキはアイスのでもいいんじゃない? このサンタさんの可愛いし」
幸太を中心に女子三人が取り囲む様子はまさにハーレムだ。もっとも教室の男女比から見れば、若干率が下がるのが難点。
「ね、でもどこでするの? 僕の家は父さんも母さんもいるし、たまの休みぐらいゆっくりさせたいよ」
「なんだコウ、弟か妹でも欲しいのか?」
「ちょっと恵、ふざけないでよ」
「んでも、里奈んちもそうだよ。えへへ、コータみたいな弟なら欲しいけどね」
「もう、りっちゃんまで」
意味深に笑う里奈に眉をひそめるも、肝心の会場が決まらないのでは話が進まない。恵の家はあまり台所設備が良くないので、必然的に由香の家になるが……。
「私の家でする? えっと、イブはだめだけど、二十五日なら何とかなるかな」
「そうなの? んでも、その日、先輩と遊ぶ約束あるし……」
「里奈も部活の皆とカラオケするし……」
「え、そうなの。困ったなあ……じゃあ、別な日は?」
「それじゃあクリスマス会にならないよ。あーあ、今年は皆で過ごせないんだ……。
ちょい、寂しいな」
里奈が感慨ぶかそうにため息をつくので、恵がしょげる肩をぽんぽんと叩いて慰める。
「それならさ、大晦日に集まろうか? 僕、おいしい手打ちそば作ってあげるよ。そんでさ、そのあと初詣にみんなで行こうよ」
「そうか? まあ、あたしはチキンが食べたいけど」
活動的な恵はあくまでも肉にこだわりを見せる。
「クリスマス過ぎた頃に安いの仕入れて冷凍しとく? かも南蛮もいいしね」
「おお、それいいね」
小気味よく指をならし、童顔の髪をくしゃくしゃと撫でる。
「そうね。それじゃあ今年は年の瀬カウントダウンとしましょうか!」
由香はぽんと手を叩き、場所と予算を計算するためにノートを開き、メインシェフである幸太に鳥の値段、そば粉、想定時間などを細かく聞き始める。
数字の苦手な里奈と恵は細かい計算を彼女にまかせ、すごすごと教室を去っていく。
「ね、それからさ……」
由香は何故か声を潜めだし、代わりにペンをすらすらと走らせた。