cure side-Rino-5
「俺の彼女に何か用?」
あっくんはまだ理乃に何か言おうとしてる男に向かってそう言った。
こんな時に不謹慎だけど理乃はすごく嬉しかった。
だって、あっくんが理乃の事『彼女』って言ってくれたから。
いつもはおとなしくて優しげに笑顔を浮かべてるあっくんが鋭い目付きで男に問うと、男は舌打ちしてあっくんに向かって小さく何かを言って去った。
男がいなくなって、理乃はあっくんの背中で大きく安堵の息を吐いた。
「ごめんね、あっくん。理乃、ちょっと早く着いちゃって…。そしたらこんな事になって…」
「えっ?ああ…気にすんなよ」
あっくんは何だかぼんやりしてるみたいで慌てて返事をした。
どうしたんだろ?
「行こうか」
理乃の疑問に気づいていないあっくんに促されて、とりあえず頷き歩きだした。
日曜のショッピングセンターはやっぱりすごい人。
あっくんに付いて歩くのも一苦労で、一瞬でも目を離したらはぐれてしまいそう…。
そんな理乃を気遣うように時々振り向いていたあっくんは、理乃が追いつくのを待ってこう言った。
「手…繋ぐ?嫌じゃなければだけど…」
嫌なはずなんてない!
「繋ぐっ!」
言葉と共にあっくんの手をギュッと握った。
こうして手を繋いでると、あっくんと理乃もカップルに見える。
好きな人とこうしてるのって幸せだ。
「ねぇねぇ、あっくんと理乃が映ってるよ」
ショーウインドウを指差してあっくんを見ると、理乃のウキウキした顔とは反対にあっくんの表情は曇って、少し怒ってるように見えた。
「あっくん…?」
理乃、何か変な事言ったかな…?
「春日…。俺達って似合ってないよな…」
「えっ?」
あっくんの言ってる意味がわからない。
「なー、喉乾いたな。何か飲もうよ」
さっきの曇った表情が見間違いかと思うぐらいあっくんは明るく言った。
「うっ、うん…」
あっくん、何だか変じゃない…?