憂と聖と過去と未来 4-4
「……俺も、憂が好きだ」
聖はそれだけ言うと、すぐにあたしを離した。
「……ひじ、り?」
「……ほら、風邪引くから。とりあえず今日は帰れ、な?」
話の意図が見えなかった。
「……うん!」
でも、あたしは黙って聞き入れた。
やっぱりあたしは聖のこと、なにもかもわかってる。
やっぱり今は無理なんだよね、聖。
「じゃあ、またね、聖」
「…ああ」
あたしはそれだけ言って、振り返ってエレベーターに乗り込んだ。
すぐにエレベーターは下降し、聖の姿は見えなくなる。
そこで初めて涙が出た。
「…ふ…ふぇっ…聖ぃ…!」
あたしの努力は無駄じゃなかった。
今、たしかに聖の横に立つことができたんだ。
わかってる、わかってるよ、聖。
夢を見せてくれてありがとう。
あたし、聖が大好きだった…