密心〜いのせぬとこ〜-3
「まさか、嫉妬でも、……されん、したか?」
「当たり前にするで?俺はみそかが好きやから」
どうしよう……
さらりと言われた言葉がどうしようもなく嬉しい、嬉しくてたまらない
思わず腰に回されていた蔵ノ介さまの手をとり、組むように絡ませて手をとり繋いでしまった
「……みそかは嘘つきや」
「そんなこと、……ありんせん」
思わず浮き足立つ気持ちがくすくすと声を弾ませてしまう
中身は酷い内容なのに、言葉を交わすだけがこんなにも嬉しい
「……今もや。みそかはずうっと嘘つきやった……なぁ、俺に言うてへんことあるやろ?」
ぎくりとした
ずくずくと浮き足立っていた心が、まるで一足一足針で止め刺されたように止まってしまった
「……ま!俺の…勘違いならしゃあないけど」
絡められた手をきゅうと強く握られたかと思うと射ぬくような目でみつめあいながら仰られた
「みそかは……俺のこと好きやんな?」
「……はい」
「……客としてやのぅて、やで」
「……はい」
胸がきゅうきゅうと締めつけられる
走り回った後のように心臓が騒いでいる
「ちゃんと……言葉にしてくれへんの?」
蔵ノ介さまの指先になぞられる唇がふるえてしまう
――言うのがこわい
「言うて……みそか」
「かのさまに、…嫉妬してしておりんした。……そのくらい蔵ノ介さまを愛しておりんす…」
言った瞬間どうしようもなく気持ちが溢れてきた
思わず逃げ出そうとした体を抱きすくめられて、ひゃあと声が出た
「あー、やっとや…。みそか遊女なんに甘言出し惜しみしすぎやで。嬉しい…めっちゃ嬉しい。ありがとう、みそか」
ぎゅうぎゅう……締め付ける力が強まるたびに、愛されてるんだと胸まで締め付けられる心地でいっぱいだった
幸せだと思った
でも今度はこわいなんて思わなかった
幸せで、それだけでいいんだと思える
こわくない…こわくない…
もう蔵ノ介さまが好きだという気持ちに胸をはれるから