今夜は、手を繋いで、眠ろう-1
−暖かい。
深い海の底から、意識が浮かび上がってくるように。
心地よい微睡みの中から、僕は目を覚ました。
ふと、横に目をやると、夕は長い脚を屈めて、丸くなって眠っている。
こちらに背を向けていて眠る夕を、僕は、そっと後ろから抱きしめた。
「ん…」
キュッと抱きしめたせいか、軽く身動ぎ、僕の方に向く。
目を閉じたまま、僕にキスをせがむように、顔を上げて。
お望みのまま、僕は、そっと、夕に『おはよう』の口づけ。
…のはずだったんだけれど。
夕は、目を閉じたまま、キスに満足したのか、にっこりとして、また背を向けて、眠りだしたのだった。
それから一時間後。
「ね、夕、起きて」
「…んー」
「そろそろ、起きないと、ほら」
「ゆーうー」
―夕は、僕よりも、朝に弱い。
僕も、朝に弱くて、中々起きたりしないけど。
それよりも、ひどいんだ。
中々起きない夕を、なんとか起こそうと、無理矢理起きあがらそうとすると。
「うう…あと、もう少し」
「もうだめだよ、ほら」
「ふえ〜いやだ〜」
そう言いながら、必死に抵抗する夕。
僕の首に手を回し、腰に脚を絡ませる。
僕にぶら下がっている状態だ。
…仕方がないので、無理矢理起こすのは諦めて。
夕の横に、添い寝して、そっと頭を撫でてやる。
「夕、おはよう、は?」
眠たそうにコロコロ転がっている夕は、まるで小さい子どものよう。
優しく、そう問いかけると、ピトっと、くっついてきて、唇を寄せてきた。
「…おはようございます、朔さん」
そう言いながら、僕に『おはよう』のキスをしてくれた。